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No.5013 2018.10.7




外付け SCSI HDD ユニットの修理  Logitec SHD-B120 電源基板







□1.異臭が発生

Logitec SHD-B120は、容量120MBというPC-9800時代全盛期のSCSI HDDです。恐らく1990〜1992年頃の発売だと思いますので、25年以上前の製品です。
使用していると異臭を放つようになりました。電解コンデンサの電解液が漏れるような独特の臭いです。
ここ数年は、冬に使用しようと電源を入れると認識できない場合がある症状も出ていました。電解コンデンサ劣化の特有の症状です。



HDDとは本来は何十年も動作できる物だと考えています。
しかしHDDは壊れます。
壊れる原因の約7割は、電源によるものだと経験則から考えています。
電源容量が低かったり、高周波の負荷変動に対する安定性が弱かったり、安定化の要であり寿命部品でもある電解コンが劣化したり、スイッチング素子の熱設計不良や過負荷によって劣化すると、負荷変動要因や供給電力要因による電源の瞬断や電圧変動、変調および整流回路要因のリップルやスイッチングノイズなどが発生します。それらの電源系の要因によってプラッタ回転のバラつき、ヘッド移動のバラつきや基準外の移動の発生、ヘッドのアンプ回路の電源変動による出力異常の発生、などのジッタ(ぶれ)の蓄積が発生し、その補正をするための補正にもブレが生じて更に大きな補正が必要となってゆき、蓄積が限度を超えていくと補正ができなくなり、不安定に積み上げたブロックが崩れるように壊れたような動作になるのだと想定しています。
残りの2割は振動や衝撃による物理的破壊、
1割は製造不良や設計不良による故障でしょう。
製造不良や設計不良は、端子接点の腐食による抵抗値増大、はんだクラックによる断線、ファームウェアのバグ、コントローラーIC後工程の異物混入・・・など色々あると思います。


と前置きが長くなりましたが、電源ユニットの定期的な点検やメンテナンスがHDDを永続的に使うための基本だと思いますので修理することにしました。






□2.ユニットの分解、修理
ユニット内部です。AC100Vを整流して12Vと5Vに降圧して出力する、普通の電源ユニットのようです。




ちなみにHDDは、アルプス電気製のDR311D911Aで、Made in JAPAN です。
定格は12V 0.8A、5V 0.35A で、12Wですので昔の物だから電気食いという訳でもありません。




ピン配は以下のようになっています。部品も大きく単層基板だと修理が楽で助かります。




とりあえず電圧から基板の状態を確認してみます。
本来は負荷(HDD)を取り付けて動作させた状態で、瞬断等の落ち込みがないかトリガを掛けて波形を見るべきですが、うっかりミスで貴重なHDDを壊したくないので無負荷で確認します。

5Vです。何となくリップルが大きい気がします。への字ですので、スイッチング系のノイズです。
1.8msくらいですので560Hzくらいです。
5VはHDD基板で3.3V等の電圧に降圧して制御に使用します。リップルは降圧しても残る場合が少ないくないので、ヘッドのアンプ回路に使う電源の元電源としては少々問題ありな気がします。




12Vです。写真の状態だとほぼ安定して見えます。レンジ1Vで時間レンジも2msに戻して、ポジションをオフセットさせて確認すると5Vと似たようなリップルノイズが確認できました。






上記の通りで気になる点はありましたが、 電圧に著しい問題はありませんでした。次に基板表面の外観確認をします。
すると分かりにくいですが、矢印の個所のコンデンサに液漏れ跡がありました。
12Vラインのパスコンです。





他に液漏れ跡はありませんでした。 さっそく該当のコンデンサを外してみると、液漏れ跡がしっかりとあります。






これが今回液漏れを起こしたコンデンサです。
16V100μF 105℃、マルコン製です。昔の製品に稀に使われていて最近はまったく見ませんが、
今は日ケミの子会社のようです。





静電容量とESRを測定したところ、95.76μF、1.1Ωでした。
パスコン用としては、ESRが高めです。冬の初期動作不良もこのESR要因の可能性が高いでしょう。
12V系はモーター等の駆動に使用されて始動時の負荷が高いので、冬の起動時は動作しなかったのだと思われます。
ESRと温度の関係は、以下のレポートで扱っています。

No.0003 ESRの測定1

No.0004 ESRの測定2





念のため、漏れ電流も確認してみましたが問題ありませんでした。
テスターを介して0.01mAまで測定してみましたがテスターも0を示しましたので、
それ以下の漏れ量です。
漏れ電流や容量抜けなどの概要は以下のレポートで扱っています。

No.0007-1 コンデンサの交換修理1 〜症状、用途〜







電解液は基板を侵食させるので奇麗に拭き取っておきます。
アルコール入りの不繊布系のウェットティッシュが手軽でおススメです。





今回は周囲の電解コンも、念のため外して交換することにしました。
ニチコン 16V 390μF、マルコン10V220μFです。
測定値は399.9μF 0.09Ω、232.5μF 0.51Ωと問題ありませんでした。
液漏れ跡もありません。





新しいコンデンサに付け替えました。
すべてPanasonic製です。昔のパナのコンデンサは必ずと言ってもよいほど経年変化で液漏れしていましたが、今の物は大丈夫なようです。(ダメなら割と重要な機器に使われることが多いので、色々終わってしまいます)
基本的な交換方法は、以下のレポートで扱っています。 交換後は必ずテスターでGND-12V、GND-5Vの抵抗値を測って、0Ωショートをしていないかの確認をします。


No.0007-3 コンデンサの交換修理3 〜交換〜







今回液漏れしていた12V系について、波形の確認です。
手間が掛かるので、同じく無負荷での確認です。
気のせいかもしれませんが、少しリップルが消えたような気がします。
5Vも確認しましたが、元々コンデンサには問題がありませんでしたので、
波形もまったく同じでへの字のリップルが確認できました。










元に戻して修理完了です。
動作させても変な臭いはしなくなりました。 あとは冬の放置後の初期動作で安定的に動くようになれば修理完了です。





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