No.0003 2015.10.27 □1.コンデンサの劣化 アルミ電解コンデンサは、壊れたり劣化したりします。 よく知られているのは、コンデンサの容量抜けです。 電解液が熱によって膨張し、圧力によって頭の部分が割れて蒸気が噴き出すといった症状で抜けます。 それまでのPentium3と比べて負荷変動の激しかった、Pentium4の頃のパソコンによくみられました。 電源系パスコンとして過度に大電流が流れ続けて発熱したためだと思われます。 電解液は、頭の部分が割れなくても足の部分のすき間から漏れ出て、周囲の基板を侵食することもあります。 足の部分からの漏れは、樹脂のふたとリード線のすき間が経年変化によって広がり、外部との気圧差によって 漏れ出ることもあるようです。 これらのコンデンサは、取り外して静電容量をテスターで測定すると、そのまま劣化した容量が表示されます。 例えば規格値470μFのものが200μFになっていたりします。 容量抜けは、コンデンサの外観やテスターで判断できるため、原因が特定しやすい不具合です。 ところがコンデンサには、もう1つ劣化によって発生する不具合があります。 それが等価直列抵抗ESRの増加です。 ESRとは簡単に書くと下図のことです。厳密に言えば銅線にも導体抵抗があるため、当然と言えば当然です。 一般的にESRは、高温では影響がありませんが、低温では増える傾向があります。 経年変化によってESRが増加し、低温によってESRが大きくなることによって、冬の朝に動作が不安定になる、 機器が起動しないといった症状がでます。 経年変化等によってESRが増加したコンデンサは、外観に異常はなく、容量もほぼ仕様通りの値を示します。 ですので、「電解コンデンサは寿命品であるため、念のためにすべて交換したら治った。取り外したコンデンサ の容量はほぼ定格通りだった。」という場合も、割と正解だったりします。 もちろん、容量抜けとESR増加が併発することもよくあります。 □2.ESRの測定 本題ですが、ESRがチェックできるテスターを購入しました。 静電容量が測定できるテスターは持っているのですが、ESRが測定できる物は初です。 MTesterというもので、ロシアなどの海外で広く流通しているようです。Youtubeにも動画が載っています。 下記の物ですが、ネット3000円くらいで買える格安品です。 中国から直輸入すれば1000円くらいで入手できそうですが、中文版があるようですので注意が必要です。 https://91make.world.taobao.com/ MTester 外観 使い方は簡単です。素子をソケットに差してレバーで固定し、黄色いボタンを押せば測定できます。 測定時間は、素子にもよりますが3〜4秒で測定できます。 ピン配は、下図のように端子Aが赤枠内のすべてです。特殊なレイアウトですが、使ってみると割と 考えられている感じです。 では、さっそくコンデンサのESRを測定してみます。静電容量も同時に測定できるようです。 まずは、ニチコン HE(M)型 10V 2200μF 105℃ 結果は、0.01Ω、2072μFでした。他のテスターではほぼ2200μFでしたので、 精度誤差は少なくないようです。ちなみに端子の極性は無いようです。逆に差しても同じ数値が出ました。 次は、旧サンヨー CZ型 50V 47μF 105℃ 結果は、0.63Ω、44.78μFでした。他のテスターでは、ほぼ47μFでした。 次は、ニチコン VR型 16V 470μF 85℃ 結果は、0.17Ω、472.4μFでした。 次は、エルナー 50V 1μF 85℃ オーディオ用。 結果は、3.3Ω、1.149μFでした。 次は、エルナー 16V 47μF 85℃ 結果は、0.43Ω、54.89μFでした。?と思って他のテスターで測定したところ、ほぼ47μFの値がでました。 原因が材質や電解液なのかは分かりませんが、静電容量のバラツキが大きいようです。 再度素子を取り付けたり、ボタンを押し直しても同じ値が出るため、この測定器側の問題のようです。 エルナーは用途が特殊なので、もしかしたらそのせいかもしれません。 次は、ニチコン 25V 33μF 結果は、0.96Ω、33.18μFでした。 次は、ニチコン RT型 16V 220μF 105℃ 結果は、0.50Ω、207.9μFでした。 もちろん電解コン以外も測定できます。 秋月で入手できるセラコンを測定してみます。村田製作所製で容量は、0.1μF 結果は、15Ω、0.11μFでした。よく使うので箱で買っていますが、別の物も同様な値が出ました。 このテスター。実はコンデンサ以外の素子も測定できます。 まずは、カーボン抵抗。秋月で入手できるものです。 結果は、4675Ωでほぼ期待通りの値がでました。 次は、金属被膜抵抗。2Wまで流せる高価な物です。 結果は、181.6Ωでした。他のテスターで測定してみたら、きっちり180Ωでした。 なんとトランジスタも測定できます。(笑) これらの素子は自動で認識するので、何かのツマミを回して切り替える操作が不要です。 定番の 2SC1815-Y でチェックしてみます。 結果は、hFE=208、Vf=716mVでした。データシート上は、Y:120〜240です。 ちなみに配列はECBで当然ですが、中華製はEBCのものがあるのでさりげなく便利な機能だと思います。 やっぱりダイオードも測定できます。 定番の 1N4007でチェックしてみます。 結果は、Vf=664mVでした。なんと寄生容量も測定できるようです。 といった感じの測定器です。きっちり測定したい場合は他のテスターを使うべきですが、 目安としては使えるのではないでしょうか? Youtubeを観ているとインダクタンスやサイリスタ、FETなども自動認識するようです。 あえて欠点を挙げるとすれば、基板剥き出しな点と素子によっては測定が面倒なことです。 ケースは、売価が1500円上がっても外部プローブ用端子付きで組んだほうが 売れるのではないかと思います。 端子台は、リードタイプの電解コンの場合、足の長さが異なるため取り付けるときに難があります。 |
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