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No.0007-1 2018.2.15


コンデンサの交換修理1 〜症状、用途〜







□1.電気製品の寿命と電解コンデンサ

電気製品には寿命があります。メーカーは寿命を考慮して製品を開発します。
電気製品における寿命とは、製品の役割を終える製品寿命を除けば、製品が壊れて動かなくなってしまうことです。
(役割を終える製品寿命とは、例えばADSLモデムやアナログTVチューナー、古いWindows95のパソコンのように 電気的には問題ないがルールや環境の変化等で使えなくなることを指します。)

製品を投げたり叩いたりすれば壊れてしまいますが、一般的に意図的に発生させた故障は寿命に含めません。 寿命とは、正常に使用していても壊れて動かなくなることを指します。このとき壊れる部品を寿命部品といいます。
例えばモーターであれば、接点ブラシやベアリングやギヤの摩耗が寿命になります。 通常は摩耗しないようにグリースなどを塗布しますが、グリースが経年変化で劣化すると摩耗が促進されて寿命に至ります。 この場合はグリースが寿命部品ということになり、一般的には定期的なグリース交換を行うことで長く使えます

では電気製品の場合、何が摩耗したり劣化するのでしょうか?
例えば抵抗やコイルの場合、部品メーカーは寿命時間を仕様として規定していません。
物理的に摩耗する箇所がなく、動作させて劣化する要素がないためです。 理論上は100年でも200年でも使えるはずです。マイコンやトランジスタといった半導体も同様です。
しかし電気製品には寿命があります。電気製品には寿命部品が少ないのですが、その1つが電解コンデンサです。 部品メーカーは保証時間という形で寿命時間を決めており、一般的には1000〜3000時間程度で規定されています。 もちろんメーカーの試験方法よりも厳しい条件であれば、寿命は仕様よりも短くなる場合があります。 例えば1500時間の場合、1500h÷24h = 62.5日しか持たないことになります。 実際は1000h程度の製品でも2〜3年は余裕で持ちますし、10年以上使い続けても問題ないコンデンサも沢山あります。 しかし電解コンデンサは、数少ない寿命部品であり、いつかは壊れる部品であるということは事実です。

つまり寿命部品が寿命を迎えて壊れても、交換をすれば正常に動作することができます。 コンデンサ関係の故障の多い製品の修理事例はGoogleで検索できますが、 そのコンデンサの考え方についての詳細は記載されていないので取り上げることにしました。



□2.電解コンデンサの故障モード

コンデンサの故障モードには大きく分けて4種類あります。


(1) 容量抜け

例えば仕様値で47μFのコンデンサが、20μFしかないことがあります。 これを一般的に容量抜けといい、原因としては電解液の漏れや、電解液の経年変化による劣化などがあります。 電解液が漏れる場合、開放弁が割れて吹き出たり、リード部分の隙間を塞ぐ封止材の劣化によって漏れ出る場合があります。容量が少なくなると、電源系であれば不安定になったり、オーディオ系であれば音がおかしくなったりします。

2018年現在で販売されている電解コンデンサでは関係ありませんが、1990年代に多用されていた四級塩電解コンデンサは電解液によるリードの腐食によって必ず液漏れを起こします。漏れ出た液が基板周囲の銅線パターンを腐食させて断線させることが問題になっています。もちろん液漏れによって容量抜けも発生します。この問題により、現在では電解コンデンサの下のリード間に他の信号パターンを潜らせるように引くのが厳禁であることが一般常識になっています。リードと繋がるパターン幅も腐食で断線しないように細すぎない設計が一般的です。
例えば四級塩電解コンデンサが多用されていたNEC PC-98NOTEシリーズはすべて液漏れを起こしているため、未修理で動く物はまずありません。動く物はみんな修理済みです。 奇跡的に未修理で動いている物は、すぐにコンデンサを交換して液漏れを防ぐべきです。





(2) ESRの増加

ESRとはコンデンサの交流成分の内部抵抗です。(直流的には絶縁抵抗を持っています)
リチウムイオン電池や鉛バッテリー電池のように、内部抵抗の小さい物ほど良い物になります。 電解液の経年変化等によって内部抵抗が大きくなると、充電電池と同じように充放電できる量が少なくなります。 ESRは低温時のほうが大きくなる傾向があるため、冬の朝にシステムをONにしても起動しないといった不具合があります。通常であれば電解液はアルミ箔の酸化を防ぎますが、充放電を繰り返すなどしてアルミ泊に酸化皮膜が作られて、ESRが増加する場合もあるようです。





(3) 漏れ電流の増加

コンデンサは直流的に絶縁されていますが、その絶縁抵抗が低下してしまいます。低下した分だけ電流が流れるため、損失が大きくなります。パスコンとして使用されている場合、より発熱しやすい条件になり、コンデンサの寿命を促進します。1個のみの漏れ電流は微々たるものですが、何十個も使用しているとコンデンサ自体が無視できない負荷となる場合があります。このとき機器を動作し続け、雰囲気温度が高温になると更に漏れ電流が増大します。この悪条件において一時的な高負荷が電源に掛かると電源が足りなくなり、今までギリギリで耐えていたシステムが落ちるといった症状が発生します。漏れ電流について詳細が記載された文献は見たことがありませんが過去に不具合品を簡単に検証した限りでは、漏れ電流に対する等価抵抗Rはコンデンサに対して直列ではなく並列として作用し、放電時は接続している負荷と分流されてしまうようです。

例えばニチコンは、「2年以上保管のコンデンサは漏れ電流が増大している場合があります。このとき約1kΩの抵抗器を通して電圧処理してください。」と明記されています。製造から10年以上経過したような物だと、元に戻らない場合があります。電解コンデンサは、使用せずに長期保管していても劣化すると考えるのが一般的です。保存時の温度も漏れ電流に影響するため、極端に言えば生鮮品だと思ったほうが良いかもしれません。




(4) 断線、ショート

タンタル電解コンデンサ、旧サンヨーOSコン、導電性高分子電解質コンデンサなどは、 状況によって内部でショートを起こし、リチウムイオン電池の爆発のように発火等が発生する場合があります。 これらのコンデンサは一般的にアルミ電解コンデンサより特性が良いのですが、 使用を禁止している業界も多いのが実情です。安易に電解コンデンサの代わりに使用してはいけません。

断線は、アルミ電解コンデンサの内部が断線することは通常あり得ません。コンデンサを意図的に共振振動させればリードを断線させることもできますが、通常の環境下では起き得ません。コンデンサのリードと基板を接続する、はんだの割れによって起こります。はんだクラックという現象は、ソニー PS3のYLODで一般的に有名となりましたが、電気製品の故障モードとしてはどの業界でも割と一般的だったりします。環境に優しい鉛フリーはんだはクラックが入りやすい傾向があるため、21世紀になって故障モードとして重要視されるようになりました。クラックについては表面実装用も同様であり、チップ型のセラミックコンデンサでも同様です。1005、0603といったように非常に小さなサイズの場合は、はんだにクラックが入らなくてもセラミック本体が割れてしまうことがあります。


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□3.コンデンサの使われ方

コンデンサの使われ方には大きく分けて、
「バイパスコンデンサ」 と 「カップリングコンデンサ」 の2つの使い方があります。


(1) バイパスコンデンサ

電源の安定化などに使われます。電源ラインとGNDの間に接続します。
一般的には省略して「パスコン」と呼ばれます。パソコンではないので注意してください。

電源の安定化といっても、どのような条件下での何の安定性を求めるかによって
以下の3通りに分別されます。


a) 急激な負荷変動に対する安定化

例えば何かの動作をONさせたときに、ONした瞬間に一時的に高い電流が流れることがあります。 これを一般的に突入電流といい、この現象を工学的には過度特性と言います。
例えば定格12V5Aの電源に負荷を接続して、ONした瞬間に一瞬だけ15A流れるとします。 この場合、一瞬だけ10A不足することになりますので、単純計算でいえば12V÷15A×10A=8Vで 最大8Vの電圧低下が一瞬発生する可能性があります。 このとき、負荷の近くにコンデンサを設置しておき、瞬間的な負荷増大時には コンデンサから電流を供給できるようにすれば、突入電流発生時も安定できるだろう、 という目論見で使用されるのがバイパスコンデンサです。 この部分のコンデンサが劣化すると、ESR増大時には鉛バッテリー電池の内部抵抗と同じように電流の流れの妨げとなり、 容量抜けの場合は貯めておける(供給できる)電流量が少なくなります。電流が足りなくなると、負荷が起動できない、駆動する電圧が足りず瞬断のような症状となり誤動作の原因になります。




b) 電源電圧の平滑化

例えばAC100の電源を直流にして使用する場合、整流ダイオードで直流に整流してから、コンデンサで半波のSin波を直線的な直流に平滑化します。 このときコンデンサは、一定の電圧以上は充電をして、一定の電圧以下は放電するといった動作を繰り返します。 つまり、常に一定の電流がコンデンサに流れて発熱してしまうため、漏れ電流が少なく、 熱に強いものを選定する必要があります。このとき低ESRであると、より大きい電流が流れて発熱が大きくなります。発熱を抑えるためにESRの高いものを選ぶと、負荷変動に対するパスコンの効果が弱まってしまいます。 この部分のコンデンサが劣化すると、平滑化の能力が弱まってしまい、比較的低い周波数のリップルが発生してしまいます。 例えば12V系の場合、12.4Vになったり12.1Vになったりとゆったりした間隔で変動する場合は、低い周波数でのリップルが発生している可能性があります。この緩やかな電源変動は、センサーなどの精度を低下させる原因になります。




c) サージやノイズのフィルタ

電子部品の故障や不安定な動作の原因となるサージやノイズを逃すために使用します。 サージやノイズは高圧高周波の電圧であるるため、 それらの高周波はコンデンサを介してGNDに逃すことができます。 しかし高い周波数帯のノイズの場合、コンデンサの持つインダクタンスが遮断をしてしまいます。 一般的にアルミ電解コンデンサよりも、セラミックコンデンサのほうがインダクタンスは低いです。 しかしセラミックコンデンサの高耐圧品は価格が高い傾向があります。 また、高周波ノイズが連続的に印可されるような状況下では、常に一定の電流がコンデンサに流れて発熱してしまうため、内部発熱に強いものを選定する必要があります。このとき発熱を抑えるためにESRの高いものを選ぶと、サージやノイズの抵抗となり、GNDに逃す効果が薄れてしまいます。
この部分のコンデンサが劣化や損傷をすると、サージやノイズを逃すことができずに、そのままマイコンやセンサや負荷などに掛かることになります。動作の不安定化や耐圧の低い電子部品の故障に繋がります。







(2) カップリングコンデンサ

電気信号の直流成分をカットして、交流成分のみ取り出すフィルターの役目をします。 交流信号から一定の周波数以上の信号を取り出すハイパスフィルターも、カップリングコンデンサと呼ぶ場合があります。

用途として、主に以下の2通りに分別されます。


a) バイアスした信号を交流電圧に戻す

例えばパワーMOSFETなどでオーディオ信号を増幅させたい場合、0V以下のマイナスの電圧になる信号を そのまま増幅することはできません。直流に収まるように電圧をオフセット(バイアス)させてから増幅します。 そのオフセット分を元に戻すために、コンデンサの直流は流さない特性を利用します。


b) 交流信号から高周波の信号を取り出す

オーディオのツィーターとの接続などに使用されます。ツィーターで低い音を出そうとすると、 スピーカーが割れてしまいます。 コンデンサのカットオフ特性を使用して、低い周波数はカットして、高い周波数だけツィーターに流れるようにします。 自動車に搭載されている高級車向けの純正ツィーターでも一般的に用いられ、パイオニア(カロッツェリア)などの市販モデルでも一般的に使用されています。




このコンデンサが劣化して容量抜けなどが発生すると、今までカットオフされずに流れていた低周波成分が流れなくなり、オーディオで使用されている場合は物足りない感じの音しか出なくなります。




>> コンデンサの交換修理2 〜選定〜 に進む


>> コンデンサの交換修理3 〜交換〜 に進む




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