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No.0007-2 2018.2.15


コンデンサの交換修理2 〜選定〜





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□4.交換するコンデンサの選定方法

前置きが長くなりましたが製品の修理事例を参考させて頂くと、少し情報が足りないなと思うことが多々ありましたので記載することにしました。分かってる人には当たり前の内容になりますが、知らないでテキトーにやってる人も多い内容であると思います。


(1) 容量を合わせる

例えば100μFのコンデンサが付いていたら必ず100μFのコンデンサに交換します。 取り付ける前には、簡易LCRメーターなどで静電容量を確認したほうが良いでしょう。 初期不良はメーカーの生産工程で自動で弾かれているのでまずありませんが、長期保管品だと容量抜けをしている場合があります。

1 ) 容量を大きくしたらどうなる?

例えば100μFの代わりに470μFを付けたとします。パスコンとして使用した場合、より大きな負荷変動に対応できるかもしれません。しかし電圧ON時の突入電流が大きくなります。元々ギリギリな電源系でON時のイニシャル待機時間が考慮されていない設計の場合、システムが起動しなくなる可能性があります。リップルがある場合、吸収していなかった低周波の成分まで吸収する場合があるため、コンデンサの発熱が大きくなります。一般的に容量が大きいほどコンデンサの体積も大きくなるため、周囲との部品の隙間が小さくなって熱が溜まりやすくなります。体積が大きくなれば、周囲の部品と干渉して物理的に取り付けられない場合もあります。

カップリングとして使用した場合、今までカットしていた低周波が流れるようになるため、例えばスピーカーなどに対しては負荷増大となり発熱が大きくなります。負荷が耐えられる場合は、例えばスピーカーであれば今まで聞こえなかった低音が出るようになります。負荷が耐えられない場合は、負荷が壊れます。例えばスピーカーの場合は、振動部分(エッジやコーン)が割れたり、大きな発熱によって内蔵されているマグネットの磁力が低下します。

容量が大きいほど、コンデンサの価格も高くなります。

2 ) 容量を小さくしたらどうなる?

例えば100μFの代わり47μFを付けたとします。パスコンとして使用した場合、今まで耐えていた負荷変動に対応できずシステムダウンなどの原因になります。しかし電圧ON時の突入電流が小さくなります。吸収できていた低周波の成分が吸収されなくなる場合があるため、リップルの発生、電源の不安定化が起きるかもしれません。平滑用に使用していた場合はリップルノイズが大きくなります。しかし損失が小さくなるため、コンデンサの発熱が小さくなります。一般的に容量が小さいほどコンデンサの体積も小さくなるため、周囲との部品の隙間が大きくなって熱が逃げやすくなります。

カップリングとして使用した場合、今まで流れていた低周波がカットされるため、例えばスピーカーなどに対しては負荷低減になり発熱を抑えられます。例えばスピーカーであれば今まで聞こえていた低音が出なくなります。



(2) 耐圧を合わせる

例えば16Vのコンデンサが付いていたら、16Vのコンデンサに交換します。

1 ) 耐圧を大きくしたらどうなる?

例えば16Vの代わりに25Vを付けようとします。一般的に耐圧が大きいほどコンデンサの体積は大きくなります。 一般的に耐圧が高いほどESRは低くなるため、パスコンで使用する場合は負荷特性が良くなります。 体積は大きくなるため、周囲の放熱性は悪化します。また体積が大きくなるため、周囲の部品に干渉して物理的に取付ができなくなる場合があります。耐圧が高いほど、コンデンサの価格も高くなります。

2 ) 耐圧を小さくしたらどうなる?

例えば16Vの代わりに10Vを付けようとします。元々コンデンサは、マージンを考慮して選定されます。12V系であれば16V以上、24V系であれば32V以上というように選定します。もし電源系に使用されて電圧が10V以下一定であり、安定している場所に使用されているのであれば、特に問題なく使えると思います。しかしそのような環境下で使用されているのであれば、コンデンサは20年でも30年でも大丈夫であるのが一般的で、そもそも交換する必要はないはずです。
例えば電源電圧が12〜14Vであり、リップルや負荷変動が大きい場合は、割と短時間で大きな発熱を起こして、圧力弁が割れて煙のようなものが出るかもしれません。もちろん圧力弁が割れてしまえば電解液が抜けてしまい、容量抜けが発生して故障となります。


と、ここまでは誰でも気をつけてることだと思います。
ここからが割とテキトーな場合があると思います。



(3) シリーズを合わせる (=温度範囲やESR、定格リップル電流などを合わせる)

例えばニチコンのコンデンサの場合、PW、VZ、KTといったような文字が印刷されています。 コンデンサには、オーディオ向け、電源向けといった用途向けに区別があります。 電源向けは平滑化や負荷変動用途のパスコン用、オーディオ向けや標準品(小信号向け)はカップリング用という使い分けが一般的であると思います。 電源向けといってもその用途の応じて様々な種類があります。

例えば電源向けのコンデンサをオーディオのカップリングに用いた場合、変位量(電位差)が大きく頻度が高い(=周波数が高い)環境下で動作するため、短時間で容量抜けなどの故障や寿命を迎える可能性があります。
逆にオーディオ向けや小信号用のコンデンサをパスコンに使用した場合、パスコンのような一定のDC電圧のバイアスと高電力の負荷変動を考慮しておらず、オーディオ向けは上限温度85℃が一般的でありパワトラやFETなどの発熱源付近で使用されることも考慮されておらず、短時間で容量抜けなどの故障や寿命を迎える可能性もあります。電力的な負荷変動の上限は、目安ですが定格リップル電流で仕様値として規定されています。

高周波の信号、サージやノイズを考慮した回路などに使用している場合も、ESLなどのそれらに影響する特性の詳細は電解コンデンサのカタログには記載されていない場合もあるため、元々付いていたシリーズを頼りに選定するしかありません。元々付いていた物と特性が変化した場合、狙いのサージやノイズが逃せなくなり他の電子部品の破壊や誤動作に繋がる可能性があります。

同じシリーズ系統でもグレードが低いものに交換してしまうと、短時間で容量抜けなどの故障や寿命を迎える可能性があります。元々付いていた物よりグレードが高ければ、特性や耐久性は改善される場合が一般的ですが、価格が高くなります。価格が高いほど過剰品質となる可能性もあり、メーカーでの採用実績も少ない場合が多いため流通しておらず、入手性も困難になります。家電では無償保証期間の1〜2年とマージンでプラス1年程度保てば十分で、特定の部品が狙い通りに壊れて安全に壊れるように設計する方針の製品が少なくないのも事実だと思います。


参考資料 ニチコン シリーズの体系図
http://www.nichicon.co.jp/products/alm_mini/alm_mini_daia_c.htm



(4) ESRを合わせる

ESRとは交流電圧における等価直列抵抗のことを指します。直流的には絶縁されているのでESRとは明確に区別をします。パスコンの場合、ESRが小さいほど負荷変動に対して強くなりますが、その分コンデンサに流れる電流量が多くなるため、発熱が大きくなります。安定して動作するようになったと思ったら、前よりも短時間で交換したコンデンサが壊れたという症状に陥るかもしれません。平滑で用いる場合、直流電圧はリップルのまったくない直線のように一定であるほうが気持ちが良いものですが、動作に問題がなければ過度な安定性は不要ですので、コンデンサで過剰に一定にしようとするのは止めるべきです。

カップリングの場合、、ESR値を抵抗成分と見立てて回路設計されている場合があります。例えばスピーカーの抵抗値は、システムによりますが4〜32Ω程度であると思います。抵抗値が低いスピーカーの場合、カップリングのESRの影響で出力特性が大きく変化してしまいます。システムは、元々付いているコンデンサのESRに合わせて調整されているため、例えば良かれと思ってESRが一桁小さい物を選ぶと音量設定に対して音が大きくなったといった症状に悩まされると思います。

他にも1990年代までの電気製品は、標準回路やコモディティ化に反するようなカラクリのような凝った回路があるため、修理には注意が必要です。単純にESRが小さいほど良いと考えて交換すると失敗します。

ESRは損失角の正接(tanδ、タンジェント デルタ)や温度特性から算出もしくは特性グラフから読み取ります。
ESRと温度(温度が上昇するとESRが低くなる)、ESRと損失角の正接は比例関係にあります。


(5) 保証時間が同等以上の物を選ぶ

メーカーは、電解コンデンサの寿命時間を保証時間として規定しています。
例えば保証時間が4000時間のコンデンサが故障したとします。特性が同じ場合、1500時間のコンデンサに交換すれば壊れるまでに動作していた時間の4割以下しか保たないことになります。しかし、1500時間経ったからといって壊れることはほとんどありません。1500時間は、約62日です。実際はその10〜20倍の時間で使用しても平気なことがほとんどです。しかしマージンとして保証時間は同等以上の物を選ぶのが一般的です。一般的にシリーズのグレードが高いほど保証時間が長く、使い方によっては標準グレードの長時間品よりもハイグレードの短時間品のほうが長く保つ場合もあります。



(6) 温度範囲が同等以上の物を選ぶ

例えば105℃と印刷されているコンデンサが使用されている場合は、105℃のコンデンサを使用します。 実際に周囲やコンデンサ自体の温度が105℃はおろか、85℃になることはないと思います。これも耐圧と同じでマージンとして大きな物を選びます。余裕度が大きいほど、発熱が寿命の要因として小さくなるからです。 温度範囲が広いほど、上限温度が高いほど、コンデンサの価格も高くなります。
ただし125℃などのコンデンサは特殊用途のため、105℃品よりも価格は高くても特性的には劣る場合があります。



(7) 形状が同じ物を選ぶ

当たり前のことですが、物理的形状が異なると交換できない場合があります。高さや太さは同等以下である必要があります。リードのピッチ(間隔)も重要です。リード線の太さも気をつけないと、微妙に太くてスルーホールに入りにくくなるといった場合もあります。



(8) 漏れ電流(絶縁抵抗)をチェックする

選定の時点では不要ですが、購入直後に確認すべき項目です。
コンデンサの漏れ電流は、良品であればグレードによらず無視できるようなμAレベルの小さな値です。
印可電圧や静電容量(体積)が大きく、温度が高いほど漏れ電流は大きくなりますが、24V以下で4700μF以下の常温であれば最大でも1mA以下で収まると思います。計算式はメーカーの仕様書に記載されています。
しかし交換する新品のコンデンサが古くて劣化していたりすると漏れ電流が大きくなっており、交換しても治らない場合があります。交換前に漏れ電流をチェックすると良いでしょう。漏れ電流のチェック方法は、コンデンサを直流安定化電源に接続して規定の電圧を印加し、そのときに流れている電流値をチェックすればそれが漏れ電流です。


(9) メーカーはどこがいい?

好みは人それぞれですが、個人的な経験でいえばニチコン一択です。
自動車業界でのシェアもトップだと思います。何かのECUのケースを開けて基板を見れば、 恐らくニチコンのコンデンサが搭載されていると思います。 コンデンサは寿命部品であり、EMCにも影響する信頼性の要ですが、 10年10万km以上使用されるクルマを扱う自動車業界で選ばれ続けるにはそれなりの理由があります。

ニチコンが無ければ日本ケミコン(日ケミ)かパナソニックが選択肢になると思います。 独断と偏見で言えば、特性的な品質が良いのがパナで、耐久性的な品質が良いのが日ケミです。 それらのメーカーですべて事足りると思います。

ちなみにかつて存在したサンヨーの緑色の外見が特徴のアルミ電解コンデンサは割と高品質で特性も良かったのですが、今はサン電子工業の名前で生産されています。流通ルートが限られていますが容易に入手可能であれば選択肢になると思います。有名なOSコンはパナソニックが引き継いでいます。





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