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No.0024 2025.1.13



車載アクセサリの電源電圧を考える 逆電圧編









□ 1.バッテリーの規格

自動車用鉛バッテリーはJIS規格で定められている規格品です。
例えば40B19L等と記載がありますが、このBという記号でバッテリーの幅と高さの寸法がmm単位で規定されており、Bは幅129mm、高さ203mmと規定されています。次の数字の19はバッテリーの長さで、19と記載されていれば19cmです。
最後のLは、プラス端子の位置を示し、Lなら左側がプラス、Rなら右側がプラスとなります。つまり、どちら側がプラス端子なのかは規格で決まっていません。
40B19Rなどの右側がプラス端子のバッテリーは、昔のトヨタや日産車で使用されていました。
今は「左側がプラス端子」がほとんどです。




□ 2.2種類のバッテリーが逆接続の原因

以下の写真は、パナソニック製の自動車用バッテリーです。左側が40B19L、右側が40B19Rです。 どちらもB19サイズのため、まったく同じ寸法です。 マイナス端子よりプラス端子のほうが径が太いため、よく見れば違いが分かると思います。






普通であれば、バッテリーを交換するときに付け間違えることはないと思います。
しかし例えば、一晩室内灯を付けっぱなしにしておいて、朝にバッテリーが上がっていたらどうでしょうか?
まったくクルマの知識がなければJAFなり自動車屋さんなりに電話するでしょう。
オイル交換やエアフィルターの交換などを自分でやってしまう人なら、 バッテリー交換も自分でやるでしょう。
このとき予備のバッテリーを持っていたら、それに交換して動くか試すこともあるでしょう。
地方では、一家に2台以上のクルマを保有していることがほとんどです。
朝の忙しい時に、プラス端子が逆である他のクルマ用のバッテリーを繋げてしまったらどうなるでしょう?

といった感じでバッテリーの付け間違いによる電源逆接続は、簡単に起き得てしまいます。

これがハイブリッド車用のリチウム電池であれば、重量や大きさもかなりの物で、サンデーメカニックが簡単に交換できるものではなく、車種専用のレイアウトで端子の逆接続を発生させることが物理的に困難なため、よく起きる問題として考慮する必要性はありません。




□ 3.電源逆接続試験

自動車業界においてバッテリーによる電源逆接続は、基本的なフールプルーフの1つとして設計に組み込まれています。ISO 16750-2にも試験規格として規定されており、具体的には 4.7.2.3 Test case 2が該当します。このときの試験電圧は14Vですが、印加時間は1minと非常に短く、市場不具合の実態とはかけ離れています。ユーザーが間違ったバッテリーを繋げて、ボルトを締めて、シリンダーキーを何度か回してみて、バッテリーが間違っていることに気づくまで最低5minは掛かるでしょう。逆接続のまま、これはお手上げだとJAFや自動車屋さんを呼べば1hぐらいは逆接続のままです。

ですので12V系の逆接続試験は、14Vで1h以上印加させ、試験後に正常な電圧を印加させたときに正しく動くのがあるべき姿です。まともな設計をしている国産車を1h逆接続させた場合はヒューズが切れることもなく、正常な接続に戻した場合に問題なく動くように設計されています。

駄目な回路の一例として、自動車特有のロードダンプのサージ電圧が内部に入り込まないように、下図のようにBATT電圧の入力回路にツェナーダイオードD1を入れたとします。サージ電圧が印加されたとき、ツェナー電圧以上の電圧はD1で吸収され、コンデンサC1以降にはツェナー電圧が印加されます。





もしこの回路で電源逆接続試験を行った場合、GNDには14Vが印加され、BATTラインがGNDとなるため、D1には大電流が流れて壊れます。一般的にツェナーダイオードはショートモードで壊れるため、試験後に正常な接続に戻しても機器が動くことはないはずです。

しかし実際にはBATT端子の車両側にヒューズが付いているため、ヒューズが切れるはずです。このとき注意が必要なのは、ツェナーダイオードがショートモードで壊れたとしても、そのときの抵抗値は0Ωではなく、有限の値を持つことです。例えば5〜6Ωであったり10Ω以上であったりすることもあります。例えばヒューズに30Aが使用されている場合、12V÷30A=0.4Ωまでの抵抗値であればヒューズが切れません。

このときに車両の不具合として発生する症状は、バッテリーを交換してもすぐにバッテリー上がりになってしまう、アイドリングストップ車の場合にアイドリングストップにならない、ショートが発生しているECUの動きがおかしいなどの 「クルマは一応動くけど、何かがおかしい」 が発生します。

電源端子は、対象となる車両に対して以下のように考えます。
BATT端子は、バッテリーを接続したときに通電されます。極性を逆に繋げたときには繋げた瞬間に逆電圧が発生します。 ACC、IG端子などは、キーシリンダー等によるメカニカルスイッチによってON/OFFされる場合は、エンジンキーを回したときに逆電圧が印加されます。 キーシリンダー等によるメカニカルスイッチによってマグネットリレーをON/OFFさせてACC、IG端子の電圧を出力させる車両の場合は、逆接続時にリレーがONとならないためACC、IG端子に逆電圧が印加されることはありません。同様にプッシュスタート型の場合も、プッシュボタンを監視しているパワーマネジメントECUが動作しないため、ACC、IG端子に逆電圧が印加されることはありません。

自動車用アクセサリーの場合は、どのような車両で使われるのか定まっていないため、最悪のケースで設計する必要があります。








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