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No.2018 2016.5.31 改訂
      2015.2.6 作成

※この記事は、諏訪通信ネットワークのコーヒーブレイクで掲載していたものです



クルマの電気回路





クルマは、様々な駆動や制御に電気が用いられています。
エンジン、トランスミッション、サスペンションといった複雑な機構で組み合わされていますが、同時に複雑な回路の塊でもあります。といっても、基本的にはパソコンや家電と何ら変わりありません。電源があり、動作させたい機器があり、配線で繋がってます。




□1.ボディがGNDライン

クルマはボディがGNDと言われています。正確にはGNDを繋ぐ配線の役目をしています。クルマに搭載される電気機器は、基本的にDC12Vの直流電源で動作します。
具体的には、走行時等はオルタネーターからDC14.1V程度、エンジン停止時は鉛バッテリーからDC12.4V程度の電圧が供給されます。
プラス側は、電線を配線して分配し、各機器に接続されています。しかしGND側は基本的に配線しません。機器からGNDの配線が出ているかもしれませんが、辿っていくと機器周辺の車体ボディにU端子などを介してボルト留めされているはずです。

同様に、エンジンルームやトランクに設置されている鉛バッテリも、マイナス側を辿っていくとバッテリ周辺の車体ボディにO端子などを介してボルト留めされているはずです。車体ボディは非道通性の防錆塗料で覆われていますが、車体の素材が金属ですので線径容量で考えた場合に非常に太い電線と同等の導通性があります。ボディを配線材として用いることで電線を減らし、コスト削減と車両重量軽減を実現しています。


クルマのボディとGND




□2.クルマの電源

クルマの電源には、

・バッテリ電源
・アクセサリ電源
・イルミネーション電源
・イグニッション電源
・スターター電源

の5種類があります。バッテリ電源以外の電源は、運転者によるイグニッションキーのスイッチやプッシュスタートスイッチの操作によってバッテリ電源から分岐されたものです。元を辿ればすべて同じ電源なのですが、経路上の電線やリレー、ヒューズの容量(最大電流量)はそれぞれで異なっています。

バッテリ電源は、通称 BATT と呼びます。 クルマのキーを抜いた状態でも常にDC12Vが出力されます。 基本的にすべての機器は、この電源を使用して駆動させます。カーオーディオやカーナビ、車載コンピューターも同様です。

アクセサリ電源は、通称 ACC と呼びます。 クルマのキーをACCかIGの位置にしたときに、DC12Vが出力されます。 カーナビやカーオーディオは、この電源電圧を機器を動作させるフラグ信号として使用します。 ACCはあくまでもフラグとして使用し、機器の動作にはBATTを使います。 外付けアンプなどの電源として使用してはいけません。 シガーソケットの電源にはACCを使用しますが、シガーソケットの最大電流は10A程度です。 シガーソケットを使わないのであれば、その分を電源として用いるのは問題ないと思われます。
STがONのとき、つまりエンジン始動時は、ACC電源がOFFになります。プッシュスタート式のクルマやアイドリングストップ機能があるクルマでは、STがONのときもACCがONのままの場合があります。

イルミネーション電源は、通称 ILL と呼びます。 スモールライトを点灯させているときに、DC12Vが出力されます。 カーナビやカーオーディオは、この電源電圧をイルミネーションを点灯させるフラグ信号として使用します。 ILLはあくまでもフラグとして使用し、LED等の点灯にはBATTを使います。 古いクルマや古いカーオーディオ等は、ILLをランプ点灯用の駆動電源として用いる場合があります。

イグニッション電源は、通称IGと呼びます。 クルマのキーをIGかstrの位置にしたときに、DC12Vが出力されます。 イグニッションコイルやフューエルポンプなどは、この電源電圧を機器を動作させるフラグ信号として使用します。 インジェクション等の電源供給にも使用されます。 コンピューターやフューエルポンプの動作にはBATT等を使います。

スターター電源は、通称STと呼びます。 エンジンを掛けるためにクルマのキーをSTARTの位置にしたときに、DC12Vが出力されます。 STは、スターターモーター内のマグネットリレーを動作させるために使用します。 スターターモーターの回転動作には、BATTの電源が使用されます。




□3.クルマの電源回路

クルマの電源の電源制御は、今までイグニッションキーシリンダで行われていました。 最も単純なタイプはシリンダの接点で直接制御していたため、キーシリンダスイッチまで太いケーブルが配線されていました。





各電源用リレーの制御用としてキーシリンダスイッチを使うタイプでは、細いケーブル配線できるようになりました。





ACC電源は消費電力の低いカーオーディオ等の動作に使用されるため、ACC用にリレーを使用することがありません。しかしシガーソケットで10A程度の大電流が安定して使用できるように、ACCでシガーソケット用のリレーを動作させてBATTから供給するクルマもあります。一部のホンダ車等で見られます。





一部のトヨタ車などでは、エンジンECUがACC電源を制御することもあります。





最近のクルマでは、ボディECUという電源系を統括管理するECUが各電源を制御していることがあります。 イモビライザーやスマートキー機能、プッシュスタート等と連動させるために、ボディECUを使用します。





ちなみにシフトレンジがDレンジの時にエンジンが掛からないのは、シフトポジションスイッチがPもしくはNレンジ以外ではONならないからです。







□4.クルマの入力回路

クルマで使用される電気制御は、基本的にはパソコンや家電と何ら変わりありません。 電気回路論に沿った物理法則に則った技術が使われています。 どんな複雑な制御も、電気回路論の基礎回路の組合せにしかすぎません。

(1) GND検知

代表例: サイドブレーキの状態検知

<概要>
スイッチのON/OFFを電気信号に変える制御です。スイッチは基本的にメカニカルなものが使用されます。
今時のクルマは、10年乗っても10万km乗っても壊れませんが、真夏の炎天下や梅雨のじめじめとした高湿度、極寒の真冬であっても、長い期間のON/OFFに耐えられる接点構造が使用されています。

<仕組み>
GND検知の基本回路は、下図の通りです。

スイッチがOFFの場合は、スイッチに電気が流れません。電気は、R1、R2を通り、GNDに流れます。 このときに流れる電流は、R1、R2の合成抵抗で決まります。信号として読み取る電圧は、R1、R2の抵抗値の比率で決まります。 一般的に言う「抵抗分割」です。信号として読み取る電圧はマイコンICで読み取るのですから、マイコンIC側でHiと認識でき、かつマイコンIC側で規定される上限電圧以下となるようにR1、R2の抵抗値を決めます。

スイッチがONの場合は、スイッチに電気が流れます。電気は、R1、スイッチを通り、GNDに流れます。R2に電気は流れません。 このときに流れる電流は、R1の抵抗値で決まります。消費電力を抑えるため、R1は可能な限り大きくします。信号として読み取る電圧は0V(GND)になります。
マイコンIC側の制約で0Vが入力できない場合は、スイッチ側に抵抗を追加すれば、その抵抗とR1で抵抗分割された電圧がマイコンICに入力できます。


GND検知の基本回路
図 GND検知の基本回路


<使い方>
回路に流れる電流は、省エネや放熱の観点から少ない方が良いのです。 しかし極端な話ですが、例えば100MΩなどの抵抗を使えば、流れる電流は0.01μAですが、 実際に動かそうとしてもうまくいかないはずです。そうすると抵抗値を下げていく必要があり、 安定的に回路が動作する妥協できる抵抗値が100kΩ、47kΩ、10kΩと小さくなっていく訳です。 もちろんその分に比例して電流が多く流れ、流れた電流は抵抗で熱エネルギーとなって消費されるので、 バランスを考える必要があるのです。
その他には部品単価、入手性(供給安定性)、搭載性(実装のしやすさ)、品質(不良率)、 特性精度、信頼性なども考慮して、現実的な抵抗値が決まります。




(2) 電圧検知

代表例: バックランプの状態検知(カーナビのリバース信号)など

<概要>
電源電圧のON/OFFを電気信号に変える制御です。 ランプ等のON/OFFの制御は外部のスイッチで行われます。 電圧検知回路は外部に影響を与えないように、可能な限り消費電流を抑えるようになっています。

<仕組み>
電圧検知の基本回路は、下図の通りです。入力電圧がOFFの場合は、回路に電気が流れません。 信号として読み取る電圧は0V(GND)になります。

入力電圧がONの場合は、回路に電気が流れます。 電気は、R1、R2を通り、GNDに流れます。 このときに流れる電流は、R1、R2の合成抵抗で決まります。 このときに信号として読み取る電圧は、R1、R2の抵抗値の比率で決まります。 一般的に言う「抵抗分割」です。 信号として読み取る電圧はマイコンICで読み取るのですから、 マイコンIC側でHiと認識でき、かつマイコンIC側で規定される上限電圧以下となるように R1、R2の抵抗値を決まります。


電圧検知の基本回路
図 電圧検知の基本回路


<使い方>
GND検知と同様に、可能な限り消費電流を抑えるようにします。

<応用>
入力電圧を12V一定で供給し、R1もしくはR2が可変抵抗であれば、抵抗値の変化が電圧の変化として得られます。 例えばエンジンの冷却水温センサのようにR2を可変抵抗とした場合、外部への配線は1本で済みます。このときのGNDは車両ボディに接続します。


センサ配線の例
図 センサ配線の例







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