Copyright (C)SUWA TSUSHIN NETWORK.
All Rights Reserved. TOPへ戻る
スポンサードリンク

No.0020 2023.8.12



Nch FETの使い方 ハイサイド駆動









□ 1.FETの使い方 その3 ハイサイド駆動

以前の レポート No.0018 FETの選び方 の 「□ 5.FETの選び方 (1) Pch と Nch のどちらを使うか 」 にて述べた通り、Nch FETはローサイド駆動(ローアクティブ、シンク動作)でしか使えません。 しかし、チャージポンプという機能を使えば、Nch FETでもハイサイド駆動ができます。


 <メリット>  

・Nch FETが使える

Nch FET には以下の長所があります。

@ Pch FET よりも種類が豊富で価格も少し安い
A Ronが低く大電流が流しやすい


 <デメリット>  

・駆動回路が複雑になる

回路が複雑になるため、基板の使用面積が増えます。一般的に品質や信頼性は部品点数に比例するため、品質や信頼性も低下します。

・回路コストが高くなる

部品点数が増えるため、回路コストが高くなります。
簡単かつ安全機能を備えたNch ハイサイド用ゲートドライバICが色々ありますが、ICは1回路あたり300円以上します。

Pch FETの最大電流量(Idmax)やON抵抗(Ron)つまり発熱が問題となる場合、単純に複数のPch FETを並列で使用したほうが安上がりの場合があります。



以上の理由により、Nch FETでハイサイド駆動をさせてもデメリットのほうが大きく、業界や用途にもよると思いますが数十アンペア以下の一般的な回路ではあまり使われていません。




□ 2.ゲートドライバIC LTC7004 の使用例

ANALOG DEVICES LTC7004 を使用して、動作を検証してみます。Nch FETをハイサイド駆動できる、専用のゲートドライバICです。

LTC7004 製品情報
https://www.analog.com/jp/products/ltc7004.html




デジキーやチップワンストップで購入しようとしても2023年8月現在で1個1000円以上するため、LT SPICEを使用したシミュレーションで代用します。


リファレンス回路は以下の通りですので、LT SPICE で同じ回路を作成してみます。




LTC7004 は、PowerProducts の中に標準で入っています。






以下が作成した回路になります。VccはゲートドライバICの電源電圧となります。
電源電圧が低いと、FETのゲート電圧について立ち上がり時に影響が出るようです。
Nch FET には、LT SPICE にて標準で使用できる RSJ400N06 を使用しています。
FETの負荷には10Ω、ドレイン電圧は24Vを印加します。








INP端子は、FETのON、OFF端子です。100msでON/OFFさせたときのゲート電圧と負荷に掛かる電圧(=ソース電圧=FETの基準電位)は以下の通りです。赤がゲート電圧、黄色がソース電圧部分です。




RSJ400N06 のゲート電圧Vgsは、最大20Vです。ローサイド出力の場合は壊れてしまいます。






しかしこの回路の場合、ソース電圧が基準電圧(=0V)となるため、実際のゲート電圧Vgsは12Vとなります。






緑の直線はドレイン電圧です。FETがONのとき、ドレイン電圧=ソース電圧となるため、ドレイン電圧に一定の加算された電圧がゲート電圧であると言えます。






LTC7004 のデータシートを読むと、ON時のゲート電圧はBST電圧に等しいとあるので、ソース電圧が入力されるTS端子との電位差が規定されている部分を確認すると、typicalで12Vと規定されています。規定通りに波形が出ていることが分かります。






Nch ハイサイド用ゲートドライバICを使用するときは、スイッチング特性も重要です。FETがON一定もしくはOFF一定となる条件では問題ありませんが、高速にON/OFFさせた場合にFETが膨大な発熱および焼損する場合があります。ゲートドライバICも、高速なスイッチング操作には対応していません。LT SPICEでは再現できなかったため詳しい検証は省きますが、ゲートドライバICは使われ方が限定されている場合がほとんどですので、用途が合うように選定しましょう。









関連レポート

>> No.0019 Nch FETの使い方


>> No.0018 FETの選び方


>> No.0017 実験評価用負荷の選び方


スポンサードリンク

TOPへ戻る


ご利用条件
 Copyright (C)SUWA TSUSHIN NETWORK. All Rights Reserved.