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No.0025 2025.1.13



アルミ電解コンデンサとセラミックコンデンサのどちらが良い?









□ 1.お互い短所を持っている

アルミ電解コンデンサとセラミックコンデンサについて、どちらを使おうか迷うときがあると思います。 アルミ電解コンデンサは、一般に電解コンと略して呼びます。同様にセラミックコンデンサもセラコン、もしくはジキ(磁器)コンと呼ばれます。以後は電解コン、セラコンと呼びます。

例えば35V、10uF、105〜125℃対応の電解コンもしくはセラコンを考えてみます。


【大きさ】

電解コンは部品サイズが大きく、セラコンはサイズが小さいです。
パナソニック EEEHB1V100AR の場合、縦横は5.3mm、高さは5.8mmもあります。
村田製作所の場合、GRT31CC8YA106KE01は3216、GRM21BC8YA106KE11は2012サイズでコンパクトです。



【価格】

耐圧や静電容量によります。
電解コンのほうが機械部品が多いため価格が高そうですが、 10uF程度であればどちらも同じくらいの価格です。
パナソニック EEEHB1V100AR の場合、チップワンストップで@22円くらいです。 村田製作所の場合、GRT31CC8YA106KE01は@25円、GRM21BC8YA106KE11は@9.7円くらいです。



【温度特性】

電解コンは低温になるとESRが大きくなり、静電容量も小さくなります。充放電特性が悪化します。高温になると静電容量が増えますが、電解液が劣化して時間と共に静電容量が低下します。




セラコンは、低温でも静電容量が低下しないと言われています。高温になると電解コンとは異なり、静電容量が低下します。しかし変化率は最大でも5%程度のため、温度によらず安定しているとも言えます。しかしこれは、あくまでも理論値です。




セラコンの実際の特性を見てみましょう。
村田製作所のGRM21BC8YA106KE11の温度特性データです。
高価格グレードの電解コンよりも、セラコンのほうが低温特性が悪いことが分かります。信頼性試験データもろくに見ず、セラコン=低温特性の影響が小さいという固定概念で設計すると、いつの日か失敗するでしょう。




【静電容量】

静電容量と耐圧によって、セラコンか電解コンかが決まります。

1μF以下の場合は、耐圧にもよりますがセラコンのほうがラインナップが豊富です。

10μF以上の場合は、電解コンのほうがラインナップが豊富です。
例えば実装密度の問題で12V系回路で使える22μFのセラコンを探しても、選択肢はほとんどないでしょう。
セラコンには後述するDCバイアス特性があるため、高耐圧大容量のセラコンはありません。




【電圧特性】

セラコンは電圧が高くなると静電容量が低下します。これをDCバイアス特性と言います。
一般的にX7R等の温度特性が良い、または大容量のセラコンほど、DCバイアス特性は悪化します。
例えば村田製作所のGRT31CC8YA106KE01、GRM21BC8YA106KE11を30V付近で使用した場合、9割静電容量が減ることになります。例えば10uFが1uF程度になります。



電解コンは、電圧によらず静電容量が一定です。


【周波数特性】

電解コンは、周波数が10kHzを超えると加速度的に静電容量が低下します。
導電性高分子と電解液を用いたハイブリッドアルミ電解コンデンサの場合は2〜300kHzまで特性が維持できるようですが、電解液が抜けたときに導電性高分子コンデンサと同じようにショートモードで壊れやすくなるためおススメしません。




周波数特性による100kHz程度までの寄生インピーダンスは、一般的には電解コンよりセラコンのほうが良いとされています。 しかし電解コンメーカーによれば、セラコンより電解コンのほうが良いとしています。 この点については、自分たちのほうが優れていると意見が分かれている状況ですので、 実際に使ってみて特性を比べてみるしかありません。




セラコンの実際の特性を見てみましょう。
村田製作所のGRT31CC8YA106KE01、GRM21BC8YA106KE11の周波数特性データです。
電解コンと似たようなESL、ESR、ESCおよび自己共振周波数を持っているインピーダンス特性であることが分かります。自己共振周波数も電解コンより桁違いに高いという訳でもなく、電解コンと似たような周波数です。




【寿命】

セラコンは基本的に寿命がないとされていますが、X5RやX7Rなどの特定の電解コンデンサは通電時間と共に静電容量が低下します。これをエージング特性といいます。1000時間で10%ほど劣化するようです。電解コンとは異なり、高速な充放電の繰り返しや周囲温度の暴露時間による劣化は発生しないようです。





電解コンは、電解液が有限の寿命を持ち、1000時間以上の寿命が設定されています。この寿命は温度による影響が大きく、基板動作時の周辺温度によって劣化します。
通電時間は下記グラフの通り、劣化にほとんど影響しません。





さらに電解コンは充放電を繰り返すことによって電極表面が劣化し、静電容量が低下します。これはリチウムイオン電池やニッケル水素電池の充放電を繰り返し、劣化する症状に似ています。この劣化は、電解コンに規定されている寿命時間とは関係ないようです。高速な充放電(リップル電流)を繰り返せば、発熱も大きくなり、すぐに寿命となります。






□ 2.セラコンと電解コンのどちらが良いのか

村田製作所は、色々な細かいデータを開示している良心的な会社です。
良いところも悪いところも包み隠しなく公開しています。
上記の比較を見るとセラコンはあまり良くないのかな?と思うかもしれません。

電解コンについては、このような細かいデータを公開していないところがほとんどです。
代理店やメーカーに問い合わせれば、自分がメーカーの人間であれば開示してくれるところもありますが、個人や零細企業には相手にしてくれないでしょう。

電源回路においては、小容量のセラコンと大容量の電解コンを並列して使われていることがよくあります。5V以上の電源回路においてはセラコン特有のDCバイアス特性の影響があるため、セラコンを付けても外しても特に変化なく、とりあえずで付けている(付いている)場合がほとんどでしょう。

セラコンと電解コンは、静電容量と耐圧、価格を含む入手性によって使い分けます。
例えば100uFのセラコンなんてありませんし、100pFの電解コンもありません。
コンデンサは、温度特性、電圧特性や周波数特性、誤差や寿命といった曖昧で不確定な要素が沢山あります。突き詰めた計算値ギリギリな使い方ではなく、大雑把でテキトーに使って動くように設計しないと、動作が不安定でイマイチ不安な製品が出来上がってしまいます。どんぶり勘定ではなく突き詰めた計算を行う時間も、暇つぶしでなければ費用対効果の少ない無駄な時間となるでしょう。








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