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No.0012 2022.8.24




抵抗の選び方、故障モード





抵抗は単純で基本的な電子部品ですが、電気設計者であっても基本的なことも知らずに何となく使っている人を見かけます。基本的なことを簡単にまとめてみました。



□ 1.抵抗の選び方

(1) 基本

抵抗は、計算した抵抗値に近い値を選びます。既製品の抵抗は、E系列という規格値で販売されています。例えば抵抗値が10.3kΩだとします。E系では10.0kΩが一番手に入りやすく、10.2kΩ、10.5kΩも販売されています。近似したくない場合は、2つ以上の抵抗値を直列に繋いで足し算で近い値にします。例えば10.0kΩと3.3kΩもしくは3.0kΩを直列に繋ぎます。



(2) 形状

抵抗の形状は、以下のようにチップとリードの2種類があります。




(3) チップ抵抗のサイズ

チップには、以下の規格サイズがあります。 修理交換する場合、基本的に同じサイズを選びます。 小は大を兼ねるので、これから説明する仕様値が適合するのであれば多少小さくてもかまいません。





(4) ユニバーサル基板に最適なチップ抵抗

ユニバーサル基板を使うとき、盲目的にリード抵抗を使いたがる人がいますが、チップ抵抗で大丈夫です。
一般的なユニバーサル基板は2.54mm ピッチです。このときのランド外径は、一般的にφ1.5〜2.0mm程度です。このときの隙間は、最大で0.96mmとなります。2つのランド間をはみ出さないようにするには、長さが4mm未満でなければいけません。規格値で合うのは、1005〜3225ということになります。しかし小さすぎるとはんだ付けが難しく、大きすぎてもランドギリギリだとはんだ付けが困難です。ですので、ユニバーサル基板には、1608、2012がおススメです。




(5) 定格電力

抵抗を選ぶ上で重要なのはワット(W)数です。抵抗に流れる電流と掛かる電圧の積、すなわち電力が定格値未満となるように選びます。一般的には1/4W(=0.25W)、1/8W(=0.125W)が標準的に使用されています。電力用、耐サージ用として1/2W、1Wなどがあります。1608等の小さい物だと1/10W、1/16Wなどがあります。

例えば電源電圧14Vで、定格10mA、順方向電圧Vf=2VのLEDを光らせたいとします。このときに使用する制限抵抗は(14-2)÷0.01 = 1.2kΩ です。このときの電力は、12V×10mA = 0.12Wです。1/10Wだと定格をオーバーして使用できませんが、2.4kΩを2個並列にすれば0.2W以下まで流すことができます。1/4W以上の物を使用すれば1個で済みます。




(6) 定格電力とチップサイズ

一般的にチップサイズが小さくなるほど、定格電力も比例して小さくなります。 以下のグラフは、パナソニックの抵抗器について、サイズと電力の関係を示したものです。ここで注目したいのは、2550という幅広の抵抗の定格電力は高く、3216サイズの定格電力は大きさの割に小さいということです。サイズでW数を判断するのではなく、必ず仕様書を見て判断しましょう。




(7) 定格電圧と素子最高電圧

抵抗には耐圧があり、「定格電圧」と「素子最高電圧」の2種類の定格値のうち低いほうの値が絶対定格となります。
「定格電圧」とは、抵抗に掛けられる電圧のことで、以下の式から求めます。例えば1kΩで1/4Wの場合は、15.8Vとなります。




「素子最高電圧」とは、その抵抗の抵抗値がどのような値であっても印加できる最高の電圧でカタログに記載されています。
例えば47kΩ、1/4Wのときの定格電圧は、約108.4Vです。しかし例えばロームのESR01シリーズ(1005、1/5W)の素子最高電圧は50Vと規定されているため、瞬間的なパルスサージでも50V以上を印加させてはいけません。「素子最高電圧」はカタログに記載されていない場合もあるため、注意が必要です。

ベテラン設計者でも勘違いしている一例ですが、1/4W、1MΩに掛けられる電圧は、0.25=V×V÷R より、500Vだと考える人がいます。もし印加すれば一瞬でバチンとアークが出るでしょう。




(8) その他

その他の要素として以下のものがあります。

a) メーカー
色々ありますが、どこを選んでも基本は同じです。製法や構造、特許の関係から品質や故障モード、信頼性で差がありますが、電子工作レベルであれば同じです。国内メーカーでは、ローム、パナソニック、釜屋電機、北陸電気などがあります。世界的には、台湾のYAGEOが有名です。


b) 許容差
抵抗値のバラつきを規定するものです。±5%、±1%といった記載です。例えば10kΩで±5%の場合、9.5〜10.5kΩまでは良品と判断されます。実際にそこまでバラツキが大きいのはまれで、メーカーやシリーズにもよりますが実際はその半分以下で収まっている場合が多いです。許容差が小さいほど価格が高くなります。


c) 被膜
炭素被膜、金属皮膜があります。金属皮膜抵抗は、大電力が流せ、許容差が小さく、熱による抵抗値変化も小さい特徴があります。しかし炭素被膜のほうが価格が安くなります。炭素か金属かで選ぶのではなく、求めるスペックが金属皮膜しかなければそれを選ぶようにします。


d) 耐サージ
耐サージと謳われているシリーズがあります。基本的な仕組みは、2つ以上の抵抗を直列にしてそれぞれの抵抗で分圧させて耐圧と電力を稼ぐものです。見た目上は1つの抵抗で済むためコンパクトですが、経路が長くなるため寄生インダクタンスや寄生容量が増えます。価格も高くなります。


e) 入手性
より良い物を求めて、入手困難な物を選ぼうとするのは間違いです。電力や抵抗値が満足できれば秋月電子で売られている1リール980円のFAITHFUL LINKで十分ですし、Chip1Stop等の部品サイトやモノタロウで買える安い抵抗で十分です。




□ 2.抵抗の故障モード

抵抗は寿命部品ではないため、実績が積み重ねられ、テーラリング等によって考え抜かれた設計がされていれば壊れることはありません。しかし実際には、以下のような壊れ方をします。


(1) はんだクラック

はんだ部分のひび割れで導通不良を起こします。鉛フリーはんだになり、はんだが硬くなってクラックが起きやすくなりました。共晶ハンダ等で再ハンダすれば治ります。
原理は、各素材の熱による膨張収縮によって応力が掛かり、金属疲労によって割れるとされています。
はんだの金属成分、実装する基板の材料、パッド形状や周辺レイアウト、抵抗周辺の実装状況、抵抗の構造と材料、抵抗の形状等の様々な要素により、はんだクラックが入りやすくなります。フラックスが古い、抵抗の管理が悪くスズメッキ表面が酸化している、はんだ付けの温度が不適切等の、品質管理的な問題でも起きます。




(2) ショートモード

抵抗体材料に不純物が混入していたり、成分にかたよりがあったりすると、まれにショートモードが起きる場合があります。ショートといっても0Ωにはならず、抵抗値を持ちます。発煙や異臭が発生し、表面が赤く発熱したりします。「定格電圧」および「素子最高電圧」、電力を超えないように使用していても発生する場合があります。 スペックでは表せない品質に関わる部分ですので、実際に使ってみて痛い目に遭わないと分からない項目になります。
製造方法や原料、品質管理に依存するため、メーカーやシリーズ、ロット等によって傾向が異なります。





(3) オープンモード

基本的に抵抗はヒューズ抵抗が切れるように、オープンモードで壊れます。
「定格電圧」および「素子最高電圧」、電力が超えるようなサージやノイズが常に掛かっていると高確率で発生します。もちろん耐圧を超える過電圧を掛ければ、当たり前のように壊れます。
まれに定格以下でも壊れることがありますが、個別不良で品質管理に依存するためスペックでは表せず、メーカーやシリーズ、ロット等によって傾向が異なります。


(4) 抵抗値の変化

常温のときの抵抗値が初期値より、高くなったり低くなったまま維持される状態です。オープンモードやショートモードに至る前に発生することが多いです。あまりにもの過大な電力や過電圧でなければ、ある日突然に何の前触れもなくオープンモードやショートモードになることはありません。抵抗値の変化を経てからオープンモードやショートモードになります。


(5) マイグレーション

可能性は低いのですが、高湿度の環境下で電位差が大きい状態が続くとイオンマイグレーションが発生して瞬間的にショートを起こします。ショートを起こすとすぐに断線するのですが、すぐにマイグレーションが発生してショートをするという繰り返しが発生します。マイグレーションの歴史は古く、1970年代にはすでに様々な文献があるので探してみてください。水滴が付いてもイオンマイグレーションは発生しますが、一般的に結露等の水滴と高湿度の環境条件は別物として考えます。





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