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No.5012 2018.10.12
3Dプリンター Anycubic i3 Mega 〜PETGフィラメントを使ってみる〜
□1.PETGフィラメント
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PETGは、ペットボトル等で使われるペット樹脂のフィラメントです。
ペットボトルは薄いので柔らかいイメージがありますが、
厚くすると剛性があり、切削等の加工性にも優れた素材です。
クルマの車内などの高温等の耐環境性にも優れているようです。
価格は、PLAやABSより2〜3割ほど高いのが一般的です。
前回のABSでは、反りが懸念点となったためPETGを使用してみることにしました。
ちなみにPETGのGはガラス繊維を指しているのだと思われます。
純粋なPET樹脂だと、高温などの耐環境性がかなり劣ってしまうようです。
今回も使用したのは、SUNLU製のこれの黒色。
安く評価件数もそこそこあり、安いので選びました。
SUNLU PETG 3Dプリンタフィラメント1.75 mm
箱の裏面にはノズル温度とベッド温度の推奨範囲が記載されています。
ABSとほぼ同じ条件で出来そうです。
ノズル温度240℃、ベッド温度80℃で使用してみます。
フィラメントは、今回も乾燥材入りで真空パックに入っています。
フィラメントは、PLAよりも艶があります。
埃が付きやすく、周囲の環境にも気を付ける必要がありそうです。
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□2.印刷
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さっそく印刷をしてみます。
SDカードを刺して起動し、ABSのときに作成したG-CODEファイルを選択してPRINTします。
反りは発生しないようですので、スティックのりは使用せずに行います。
スカートはABSのフィラメントが残っていたようで、艶がありません。
フクロウのモデルのほうは、強い艶があります。
印刷が完了しました。おや?
糸引きがすごいことになっています。
写真 240℃出力結果
よく見ると、頭の部分にフィラメント屑が付いています。
ちなみに造形物の艶は、PLAの5割増し以上の輝きでテカテカしています。
写真 240℃出力結果
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□3.印刷条件の変更
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まず、ヘッド温度を240℃から230℃に変更してみました。
ベッド温度は80℃から60℃に変更して、ベッドのくっつき具合も確認します。
230℃の印刷結果です。糸引きが発生していますが、240℃のときよりも減ったようです。
頭の部分のフィラメント屑もほとんどなくなりました。
ベッド温度は60℃でも、反りは発生しませんでした。しっかりとベッドに密着していました。
写真 230℃出力結果
さらにヘッド温度を220℃に変更してみました。
230℃とほぼ同じ糸引き具合です。どうやら糸引きの要因は温度条件のみではなさそうです。
写真では分かりにくいのですが、左の人形に反りが発生しました。台座左後ろの隅です。
剥がれるほどの反りではありませんでしたが、ABSでスティックのりを使用したときと同じような反り方でした。
写真 220℃出力結果
ヘッド温度を230℃に戻し、印刷速度を60mm/sから30mm/sに変更してみました。
印刷時間は単純に2倍とならず、1.4倍程度に抑えられるようです。
結果、糸引きはほとんどなくなりました。
写真 230℃ 30mm/s 出力結果
糸引きを完全になくしたいと思い、Curaの設定をAdvancedに変更して、
ヘッド温度230℃、印刷速度30mm/sは変更させず、
フィラメントの引き戻し距離を6mmから3mm、引き戻し速度を40mm/sから10mm/sへ変更してみました。
結果、糸引き具合が若干増えてしまいました。
引き戻しの速度を上げて距離を増やしてみたいところですが、フィラメント移動用のギヤがPETGだと初期条件で滑って空転気味のようでしたので断念しました。
写真 引き戻し距離3mm 引き戻し速度10mm/s 出力結果
ヘッドの移動制御についても色々と調整してみました。
しかし深みにはまり、最後にはまともに印刷できなくなってしまいました。
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□4.結論
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結果の一覧です。
240℃は糸屑をすべて取っています。糸引きはどのような条件でも発生しますが、
ヘッド温度 230℃、印刷速度 60mm/s が最適な設定のようです。
30mm/sにすれば若干改善しますが、印刷時間の増加に見合うほどではありません。
糸引きは、すべて同じ箇所から同じように出ていることが分かります。
尖って薄い層となる形状で、かつ出力を伴わないヘッドの移動が発生すると、
糸引きが発生するようです。
もしかすると糸引きの発生しない奇跡の条件があるのかもしれませんが、
糸が引かないように設計をしたほうが早そうです。
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