No.3001 2016.4.6 キャンプ場で炊飯器などの家電製品を使いたいとき、 サーキット場でコンプレッサーを使いたいときに小型発電機は必須のお供です。 大震災などの災害時にも役立ちます。 小型発電機の比較一覧表は、こちら を参照してください。 □1.発電機メーカー 発電機は、クルマ系、工具系、重機系のメーカーや商社が参入しています。 (1)クルマ系 日本の自動車やバイクメーカーです。昔はスズキや川崎重工も販売していました。 エンジンの品質や信頼性は説明不要だと思います。 取扱説明書もWEBサイトで公開されています。 ヤマハ http://www.yamaha-motor.co.jp/generator/ 取扱説明書 ホンダ http://www.honda.co.jp/generator/ 取扱説明書 富士重工 http://subarupower-global.com/jp/generators/ 取扱説明書 (2)工具系 やはり自動車メーカーと比べると、取っ付きの悪い部分を感じます。 取扱説明書もWEBサイトで公開されず、仕様も非公開な部分が多いです。 電動工具で歴史のある日立グループの企業です。 エンジン発電機も、電動工具の1つという位置付けです。 日立工機 http://www.hitachi-koki.co.jp/powertools/pro/engine/engine.html 取扱説明書 ※エンジン工具カテゴリの最下欄 群馬県の会社でエンジン部品などを生産しています。 発電機メーカーとしての歴史も長いようです。 澤藤電機 http://www.sawafuji.co.jp/seihin/elemax.html 溶接機や発電機で歴史のある日本のメーカーです。 どこかで見掛けたようなデザインの発電機がラインナップされています。 デンヨー http://www.denyo.co.jp/products/user_data/keitaikogata.php プロ用の電動工具や溶接機、チェーンソーなども手掛けているメーカーです。 新ダイワは会社名ではなく、ブランド名です。 やまびこ(新ダイワ) http://www.yamabiko-corp.co.jp/shindaiwa/products/ 取扱説明書 送風機やコンプレッサーなどを扱っているようです。 カタログが無いため、発電機から撤退されるのかもしれません。 ナカトミ http://www.nakatomi-sangyo.com/index.html (3)重機系 欧州メーカー製品のような雰囲気ですが、Kipor は1999年に創業した中国企業のようです。 公式サイトの http://www.kipor.com/ へアクセスすると、変なページに飛ばされます。 倒産してしまったのでしょうか?Wikipediaでも出てこない謎の企業です。 Kipor Power http://kiporpowerequipment.com/generators-new/ パワーテック(日本代理店) http://power-tech.jp/makerlist/ 三菱重工グループでエンジンを手掛けている会社です。 三菱重工エンジンシステム http://www.mhi-eng.com/products/portablepower.html 農機を扱っている大阪の会社です。 ヤンマー https://www.yanmar.com/jp/construction/generator/ □2.発電機の仕組み 発電機の仕組みは、自転車に付いている発電式のライトと一緒です。 ライトをONにすると、ペダルをこぐのに強い力が必要です。 ライトを明るく照らそうとすれば、速くこぐ必要があります。 それをエンジンの力で回して電気を得るのが発電機です。 発電機のエンジンには、ガソリン4st、ガソリン2st、ディーゼル、LPガスの4種類があり、 それぞれの作動原理はクルマやバイクと同じです。 燃料を燃焼爆発させて、回転エネルギーとして取り出して、発電モーターを回しています。 天然ガス(GNG)は、タクシーなどで使われています。 発電機は、負荷が変動しても常にAC100V一定となるようにエンジンの出力を調整し続けます。 □3、インバーターの意味 消費電力の変動はミリ秒という短い時間で変動します。 エンジンの出力調整では時間差が生じてしまい、電源電圧が負荷変動に応じて変動してしまいます。 この瞬間的な負荷変動は、大きな計測器やサーバーのような高性能パソコンで電源が落ちる原因となります。 そこで電気回路上で消費電力の変動を吸収して、常に一定の電圧が出力できる機能が付きました。 これがインバーターです。 発電された高圧高周波の三相交流を直流電圧に変換して、 直流電圧をスイッチングで交流電圧 AC100Vに再変換して出力する仕組みです。 出力電圧の状態を常に監視して、スイッチングを調整して変動を吸収し一定の周波数と電圧を作ります。 これらの複雑な電気の変換で、電力は2割程度損失します。 しかし、インバーター方式で使用する三相交流モーターは、回転エネルギーから最も多くの電力を取り出すことができます。 波形は、基本的にサイン波が出力されます。 シガーソケットに接続して使うACインバーターのように矩形波で出力されるタイプは少ないと思われます。 発電機用のインバーター機能の長所として、ノイズが載らずに綺麗なサイン波形が出力されることをウリにしているためです。 ちなみに小さな電圧変動では、家電機器の動作には影響しません。 このノイズのような変動の要因は、主に負荷変動や生成波形のDA変換の分解能によるものです。 この変動によって影響しそうな機器の代表例として挙げられそうな医療機器や測定器なども、 現行品はEMC耐性(EMS:サセプティビリティ)をチェックした上で販売されているため、普通は影響しません。 例えば医療機器の場合、医療事故を防ぐためにEMC耐性について厳しく基準が設けられています。 ただし、新しく舗装したばかりの道路のほうがクルマの乗り心地が良いのと同じで、綺麗な電源ほど良いのは当然です。 インバーターはスイッチングのON/OFFでAC100Vを生成しているため、50/60Hzの切替が容易です。 単純に考えると、正極側と負極側それぞれのON時間を0.01秒にすれば50Hz、0.0083秒にすれば60Hzです。 ONする時間を0.0017秒ずらせば、周波数が切り替えられることになります。 スイッチはパワーMOSFETが使用され、スイッチングのON/OFFはマイコンで制御しています。 □4、インバーター以外の調整方式 インバーター方式以外では、コンデンサ補償式、AVR方式、サイリスタ位相制御があります。 コンデンサ補償式やAVR方式は、発電モーターのステーターコイルの磁力を調整して、 発電電圧を調整する仕組みです。 周波数制御ではないため、エンジン回転数に比例してAC100Vの周波数が変動します。 エンジンは常に一定の回転数となるために制御します。 インバーター方式は、発電された電力を変換、再生成して出力する仕組みです。 AC100V出力の周波数とエンジン回転数(50/60Hz)は、一切連動しません。 インバーター方式とそれ以外では、調整方式が根本的に異なります。 電圧の安定性、波形の綺麗度合い、損失などを比較した場合、 インバーター >> AVR ≧ コンデンサー補償式 > サイリスタ位相制御 となります。 サイリスタ位相制御は、サイン波出力をPWM制御のようにスイッチングで断続して出力を制御する方式です。 波形をブツ切りにすることになるので、波形は汚くなります。 周波数制御ではないため、コンデンサ補償式やAVR方式と同様にエンジン回転数に比例してAC100V出力の周波数が変動します。 これらの方式では、エンジン回転数を一定に保つ必要があります。 発電モーターが減速機構なしに直結している場合は、 50Hzの場合は、50Hz×60秒=3000rpm 60Hzの場合は、60Hz×60秒=3600rpm に保つ必要があります。 例えば50Hzで100rpm変動した場合は、2900rpmのときに48.3Hz、3100rpmのときに51.7Hzとなります。エンジン回転数の変動に連動して、周波数も変動します。 インバーター方式の場合は、必要な電力以上が発電できていればエンジンが何回転で回っていようが関係ありません。 □5、騒音性 発電機を使用していて、割と気になるのが騒音です。集合住宅や住宅密集地では、近所迷惑になります。 アウトドアの山奥で使うとしても、周りの自然を楽しんでる人々が騒音を聞かされる羽目になれば、 うるさくて石を投げたくなる気分でしょう。まともな人間であれば、周りに配慮をすることは当然です。 騒音は、無負荷時が一番低く、定格出力に近い高負荷時で最もうるさくなります。 クルマであれば急な坂道を加速するときにエンジン音が一番うるさくなるのと同じです。 騒音値で(A)と記載されている場合は、A特性を指します。 人間が聞こえる範囲の周波数がメインで測定できるようにして、特に聞こえる周波数範囲は強調して補正し、 聞こえにくい範囲を弱くする補正を掛けるのがA特性です。 例えば、クルマのリヤバンパーにはコーナーセンサーが付いていますが、空間距離を算出するために超音波が出ています。 超音波は人間の耳には聞こえないため、コーナーセンサーからキーンという騒音が気になると苦痛を訴える人はいません。 そのような音を騒音として計測しても無意味なため、A特性があります。 □6、エンジン特性 発電機用エンジンには、ガソリン4スト、ガソリン2スト、ディーゼル、LPGガスの4種類があります。 エンジンにはそれぞれの特徴があります。 (1)燃費 (燃焼効率) 燃焼効率が悪いと、有害な一酸化炭素や未燃焼ガスなどが排気ガスに多く含まれるようになります。 出力に対して燃料を多く使うようになり、燃費も悪くなります。 燃焼効率が一番良いのはディーゼルです。 4ストガソリンもインジェクションタイプは効率が良くなっています。 キャブレータータイプは空燃比の燃料の割合が高くなるため、燃焼効率が悪化します。 燃焼効率が一番悪いのは、2ストガソリンです。 (2)燃料価格 燃料価格は、軽油を使うディーゼルエンジンが一番安いです。クルマに積んで公道を走る動力源ではないので、 灯油を使っても脱税にはなりません。ただし灯油を使うとガバナが焼き付きます。LPGはカセットボンベを用いるので、 1〜2時間ごとにカセットボンベを交換する必要があり、1本あたり200円程度するので割高になります。 (3)重量 重量は、圧縮比が高いディーゼルエンジンはシリンダ周囲を頑丈な構造にする必要があるため重量が重くなります。 一番軽く作れるのは、部品点数が少なく、圧縮比が低く軽量化しやすい2ストガソリンです。 ただし設計によって大きく左右される要素のため、2ストガソリンより軽いディーゼルエンジンもあり得ます。 (4)静音性 静音性は、LPGエンジンが一番静かです。一番うるさいのは圧縮比が高いディーゼルエンジンです。 ただしマフラーなどの消音設計によって大きく左右される要素です。 静かなディーゼルエンジンもありますし、うるさいLPGエンジンもあります。 (5)燃料の管理 燃料の管理は、カセットボンベを用いるLPGエンジンが一番楽です。 ガソリンエンジンは危険性の高いレギュラーガソリンを用いるため、色々と面倒です。 ガソリンは揮発性が高く、長期間タンクに入れたままにしておくと変質してしまったり蒸発してしまいます。 軽油はガソリンより着火点が高いため危険性が低いのですが、やはり可燃物のため管理が大変です。 (6)潤滑油の管理 回転エネルギー発生装置としてエンジンを用いているために、クルマと同じようにエンジンオイルの交換が必要です。 燃料の管理という点で一番楽なのが2ストガソリンです。燃料と一緒に燃えるため、交換する必要がありません。 しかし給油時に2スト用オイルを注入して混合ガソリンを作る必要があり、面倒です。 オイルを入れ忘れると、エンジンが焼け付いてしまい故障してしまいます。 ディーゼルエンジンはオイルが汚れやすいため、交換しなければならない頻度が高くなります。 インジェクションタイプの4ストガソリンやLPGエンジンはオイルが汚れにくいため、 使用頻度にもよりますが1年に1回といった定期的な交換で済みます。 (7)環境特性 排気ガスの環境特性が一番良いのは、LPGです。 排気ガスはクリーンなのですが、カセットボンベを用いる必要があり、カセットボンベ容器の製造廃棄、 カセットボンベのパッケージング、カセットボンベの輸送流通などで多大な資源やエネルギーを消費して 廃棄物質を生み出しているため、実は一番悪かったりします。 実質的に一番良いのは、インジェクションが用いられている4ストガソリンです。 2ストガソリンは、燃焼効率が最も悪いため沢山の一酸化炭素や未燃焼ガスなどが排出されます。 潤滑オイルの燃え残りも排出されます。 ディーゼルエンジンは燃焼効率が最も良いのですが、ガソリンとは異なり燃料が気化せずに液体のまま燃焼するため、 PM粒子も多く排出されます。 燃焼効率が良く常にリーンバーンですので、有害な窒素酸化物の排出もガソリンより増えてしまいます。 (8)点火ノイズ ガソリンエンジンやLPGエンジンは、圧縮した混合気を爆発させるために点火プラグで着火します。 高圧の電気をアークに変換するため、妨害電波が発生します。 ラジオでのノイズの重畳、テレビでのブロックノイズ発生、携帯電話で通話中に切れてしまう、 といった影響を及ぼす可能性があります。 ハンディ型や高級機の場合は、ノイズ対策でシールド処理されているのが一般的で、影響は小さいようです。 ディーゼルエンジンには、点火プラグがありません。 空気を圧縮したときに高温となり、その熱源で軽油が自己着火するためです。 寒冷地の冬では圧縮した空気が着火温度まで上昇しないため、 空気を余熱するグロープラグというヒーターが搭載されている場合がありますが、ノイズは発生しません。 (9)保守性、整備性 エンジンの保守性や整備性は、エンジン方式よりも発電機全体の構造やサイズに大きく左右されます。 保守性や整備性が考えられていない設計だと、整備が大変になります。 販売している会社の規模やアフターサービスに対する方向性も重要です。後々部品が壊れたときに、 その部品を取り寄せられることができれば修理交換をして使い続けることができます。 自動車やバイクメーカーであれば、旧機種であっても部品を取り寄せられる場合が多いようです。 ホンダやヤマハの場合は、バイクショップでメンテナンスしてもらえる場合が多いようです。 カーディーラーでは基本的に受け付けていないようです。 商社等の場合は、現行品でも部品供給そのものに対応していない場合があるようです。 保証期間以内での故障は新品交換などで対応する場合があるようです。 長く使い続ける予定であれば、そういった口コミも調べておいたほうが後々後悔しません。 |
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