Copyright (C)SUWA TSUSHIN NETWORK.
All Rights Reserved. TOPへ戻る
スポンサードリンク

No.2028 2017.10.25 移稿
      2015.5.15 作成

※この記事は、諏訪通信ネットワークのコーヒーブレイクで掲載していたものです



プリウスの電気1





もはやハイブリッド車は珍しくもなく、どこでも見かけます。F1ですらハイブリッドシステムが搭載されています。
しかしクルマ好きでエンジンやサスペンションに詳しい人でも、ハイブリッドシステム関連には興味が薄い人は少なくないでしょう。




□1.プリウスの電力系回路

ハイブリッド(以下、HV)車というと、複雑な仕組みで訳がわからないというイメージがあります。 しかし電力系の電気回路は割と単純です。 以下は、3代目プリウスの電力系の回路です。制御系、センサ系の回路を含めると煩雑になりすぎて 理解が難しくなるため、省略をしています。



3代目プリウスの電力系回路
図 3代目プリウスの電力系回路




□2.プリウスのバッテリ上がり

プリウスもバッテリ上がりを起こします。 鉛バッテリの充電が無くなってしまったらHVバッテリを電源として使えば良いと思いますが、 HVシステムを制御するシステムが12V駆動のため、HVバッテリを制御することができません。 HVシステムのパワーマネジメントECUは、鉛バッテリーの電圧を監視しているので、 閾値以下の電圧になったときに降圧コンバータのみ動作させて充電することも可能だと思います。 電圧を監視してシステムを起動させるスイッチ機能であれば0.5W以下で十分に実現できるので、 電圧監視によるバッテリ上がりの懸念も低いと思われますが、2014年現在でそのような機能が搭載されている車種はないでしょう。

ところで日本では、どのようなクルマのトラブルが多いのかご存知でしょうか?
JAFロードサービスの出動理由TOP3は、

JAFロードサービスの出動理由
図 JAFロードサービスの出動理由

参考文献:平成26年度のロードサービス救援依頼内容
http://www.jaf.or.jp/rservice/data/2014/year.htm


となっています。
バッテリー上がりの原因は、ライトの消し忘れや、半ドアで室内灯が付いたまま、というのが多いそうです。 長期間乗らないことによる暗電流による放電や、バッテリーの自然放電(劣化)などもあります。

ちなみにプラグインHVでAC200VもしくはAC100Vから充電をするときは、回路図上の電源SWはOnになっています。 IGがOFFのときや人がいないときにシステムがOnになるのは問題がある、という理由で対応しない訳ではなさそうです。





□3.200V系の経路を12Vにしたらどうなるか

クルマで使用される電源が12Vなのは、安全性が最優先されているからです。 鉛バッテリの端子を触れても感電しないのは、乾電池と同じで低電圧であるためです。 トラックのバッテリのように電圧を上げようとすると、バッテリのセル数が多くなり、単純に大きく重くなるのも理由です。

モーターを動かすのに650Vまで昇圧するのであれば、コンバーターには12Vを供給しても良いような気がしますが、実際にそうした場合は以下のようになります。
(今回は経路上の話ですので、インバータから先の損失は無視します)



電圧による損失の差
図 電圧による損失の差




上記のように、電圧が12Vと低い場合は大電流を流す必要があり、経路の影響による損失が大きくなります。 損失が大きいほど負荷が使用できる電流が下がり、電圧が分圧されて低下し、出力が落ちます。

苦労して接触抵抗が無視できるように対処しても、導体抵抗は必ず存在します。 例えば太めのブースターケーブルは最大100A程度流せますので、 経路上に少なくとも50本分以上を束ねて引く必要があります。 ボディ側のGNDも容量不足になるはずですので、同様に数十本を束ねて引く必要があります。 よって、12Vで5000Aも流そうとするのは、構造的にも難しいことが分かります。

なお、高出力に対応するために電圧を上げるという取り組みは昔からあります。 トラックの場合は、大排気量でポンピングロスの大きいディーゼルエンジンのため、 セルモーターの要求出力が大きくなります。 単純に12V+12V=24V の電圧で、4〜7kW程度のセルモーターが回せるようになってます。 この場合、166.7〜291.6Aの電流が流れることになり、最大でもHVの電線と同容量で済みます。 もちろんHVより絶縁耐圧が低くてよいので被覆が薄くなり、電線が細くなります。 7kWは、10000cc以上のエンジンで使用されています。 ちなみに乗用車には1kW程度のものが使用されており、エンジン負荷によりますが40〜60A程度流れます。



スポンサードリンク

TOPへ戻る


ご利用条件
 Copyright (C)SUWA TSUSHIN NETWORK. All Rights Reserved.