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No.0009 2018.12.22




1GS/s デジタルオシロ OWON SDS1102 製品レビュー







□1.概要

OWON SDS1102 (実売価格28,000円) は、最近Amazonで「オシロスコープ」を検索すると上位で出てくる機種です。
カスタマーレビューでの評価もなかなか良いようです。
個人的にはRIGOLのオシロが欲しいと思っていたのですが、
この機種を購入しました。



付属のDVDに入っているドライバやソフトは古いので、
メーカーサイトから最新のバージョンをダウンロードして使用しましょう。
ちなみに日本のサイトは代理店のようですので、情報やソフトはほとんどありません。


USBドライバ
Windows専用ソフト
製品ユーザーマニュアル(英語版)
メーカー製品情報(WEB)



主な仕様は以下の通りです。
比較として当方の主力機種である横河 DL1540を載せてみました。

メーカーOWON(オウオン)YOKOGAWA(横河)
機種SDS1102DL1540
チャネル数
最高サンプリングレート1GS/s200MS/s
全チャンネル使用時:100MS/s
周波数帯域100MHz150MHz
A/D変換8bit8bit
電圧レンジ5mV/div〜5V/div1mV/div〜5V/div
時間レンジ2ns/div〜1000s/div5ns/div〜50s/div
波形記録USBメモリ3.5"FDD
301mm268mm
高さ152mm268mm
奥行70mm278mm
重さ約1.1kg約4.9kg
発売日2017年1990年代後半?



チャネル数は2つしかありませんが、通信がシリアル化して電源もシステム化されている現在、
信号や電源の同期性や遷移について確認する機会はほとんどなくなりましたし、
逆にそれを確認したい場合は4チャネルでも足りない場合が多いと思います。
(そういった場合は、トリガ信号で複数のオシロを制御しますが本機はトリガ入力端子がありません。1ch分をトリガ信号にして複数のオシロを使用する場合は、2chオシロだと測定したい箇所分の台数が必要です。一般的にはHIOKIのメモリハイコーダーなどを使用しますが、サンプリングやユーティリティの操作性に難があるのも事実です。)

リップルノイズの重畳具合や信号の波形を確認するくらいであれば、2チャネルで十分です。
ちなみにDL1540は、カタログをよく読むと但し書きでスペックが落ちる文言が各所にあります。
他のスペックは似たようなものですが、とにかく軽くて小さいのが特長です。
約5kgの鉄アレイを持ち運びするのは割と大変ですが、1kgしかないと軽すぎて落としてしまいそうなくらい持ち運びが楽です。



波形の記録は、USBメモリにできます。現在のオシロでは当たり前の装備であり、横河のオシロも2000年代のモデルでは標準対応しています。DL1540は3.5インチFDDであり、しかも壊れてしまっていたため波形の記録はデジカメで撮っていたのですが、これでかなり楽になりました。ブラウン管の画面を写真に撮るのは、想像以上にかなり難しいんです。





一応、パソコンと接続するUSB端子もあります。AmazonのカスタマレビューだとWindows10で使用できないという記載がありますが、手動でドライバのフォルダを指定してあげると正しくインストールできます。ドライバに付属している英語のPDFインストールガイドにも同じように書かれています。








□2.プローブの校正は必須

さっそく、プローブを接続してCAL信号をチェックしてみました。





面白いくらい波形が曲がっています。
Agilentや横河のオシロやプローブを買うとキッチリと校正されているので、それが当たり前だと思っていました。





さっそく、つまみを精密ドライバで回して波形を調整します。
このつまみは可変コンデンサであり、静電容量を調整することで位相補正ができます。





補正後の波形です。割と奇麗にできました。





本来はこのレンジで補正作業をするのが正しいのですが、 個人的にはどのメーカーのオシロでも上のレンジで行っています。








□3.日本語表示もできます

なんと日本語表示にも対応しています。
しかし何となく見にくい日本語フォントで、普通ならカタカナだと思われる項目も漢字であるのに少し違和感を感じました。英語表記のほうが分かりやすくて良いと思います。






□4.画面保存は [COPY] ボタン

Function - Save の [Type] を image にしておくと波形画面がBMP画像で保存できます。
項目の [Save] を押すとUSBメモリに保存できるのですが、CAL端子の近くにある [COPY] ボタンを押しても保存できます。
  





□5.測定機能やカーソル機能

測定機能やカーソル機能もキチンとあります。
ただし、カーソルは電圧軸と時間軸の同時表示はできないようです。


測定機能


カーソル機能





□6.FFTアナライザ機能

今のオシロでは標準的に付いていますが、FFTアナライザ機能もあります。
sin信号のSGがあれば良いのですが、持っていないのでCAL信号を入力しています。


FFT機能





□7.波形を測定してみる

実際に波形を測定して、どの程度の実力なのか確認してみます。
CANの500kbpsの波形です。CANは差動信号ですので、2chの性能を見るには良い信号源です。5μs/divですので当たり前ですが普通に撮れており、演算も普通にできています。



波形の立ち上がりです。0.1μs/divで500MS/sとなっています。
それっぽい波形が取れています。



波形の立ち下がりです。同じくそれっぽい波形が取れています。
残念ながらDL1540では鈍ってしまってここまでのリンギング波形は見れません。







□8.サンプリングと周波数帯域について

1GS/s とあった場合、1秒間に1G = 10億回サンプリングしますよという意味です。
時間間隔にすると、1秒÷10億回 で、1nsに1回のサンプリングとなります。
ただしこのオシロ、2チャネルを有効にしていると限界の2ns/divまでレンジを下げても500MS/sと表示されます。
どうやら、500MS/s x 2ch = 1GS/s であると謳っているようです。
もちろん1チャネルのみ有効時は 1GS/sとなっています。
でもこれは詐欺ではなく、例えば横河のオシロでも全チャネル使用すると
サンプリングが半分に下がると仕様に但し書きで小さく記載されています。
こういう記載方法は、オシロの世界では割と普通だったりするので注意が必要です。
なお、500MS/sの場合は2nsに1回のサンプリングとなるため、2ns/divのレンジで波形を見ても意味がないということになるでしょう。(1GS/sでも似たようなものですが)


2チャネル有効時



1チャネルのみ有効時


周波数帯域は、信号として入力することができる最も高い周波数を指します。
それ以上高い周波数は減衰もしくはカットされてそもそもサンプリングすることすらできません。
付属のプローブの帯域は100MHzですので、プローブの時点で弾かれることになります。
矩形波の場合、矩形波のクロック周波数が仕様内であってもサンプリングや帯域が足りないと丸い波形になってしまいます。例えば鈍った状態でIパターンを測定しても、あまり意味のないデータとなります。



矩形波と帯域の関係は、とても簡単な方法で分かります。
CAL信号を使用して、プローブの位相補正で角が丸まるようにすると、FFTで見たときに高域がなくなってしまいます。
これはプローブの位相補正がローパスフィルターになっていて、高域がカットオフされるためです。




ちなみにこれがUSB2.0の信号波形を測定した画面です。USB2.0の信号波形は差動信号であり、480Mbps(=480MHz)で1ビットが約2nsと非常に高速な矩形波です。一般的に測定には最低2GHz以上の帯域が必要とされ、サンプリングは10GS/s以上が必要とされています。 SDS1102ではスペック的に全然足りないので、このようにグチャグチャな波形になってしまいます。








□9.その他

使用していて、いくつか気になる点がありました。
確認した機器のファームウェアのバージョンは、V2.4.1 です。
時間がなく少ししか触っていないので、他にも色々出てくるかもしれません。

保存できる画像形式がBMP(ビットマップ)のみ
該当する設定項目がありませんした。
一般的なオシロだとPNGやJPGなどの主要フォーマットは対応しています。
画像を保存するとき、毎回ファイル名を聞いてくる
一般的なオシロだと、自動的にファイル名を付けてくれる機能があります。
しかし本機にはそのような機能がなく、毎回聞いてきます。
使用していてかなり煩わしいと感じました。



時計がない
現在時刻が表示されないので、保存した画像ファイルを開いて見ても
いつ撮ったものなのか分かりません。
ファイルのプロパティを見ても、作成日が2000年1月1日 0:00:00固定です。
外部GNDの端子がない
外部GNDの端子がないため、必ずプローブからGNDを取る必要があります。
こういう基本的なものが色々とありません。
画像保存中のバーも記録されることがある
これはバグだと思うのですが、時々保存中に表示されるバーも記録されます。
これはすぐに直して欲しいです。



演算機能の波形の電圧表示が表示されない
保存した画像の波形を見ても何V/divなのか分かりません。
演算機能の波形のGND位置が表示されない
演算機能の波形のGND位置は自由に移動できるのですが、位置表示の矢印がチャンネルの矢印と重なると消えてしまうので分かりにくくなってしまいます。
演算機能にバグがある その1
CAL波形を演算させたときの表示です。
マイナスなのでゼロになるはずですが、変な波形が表示されています。
プラスの演算では、特に問題なく表示されていました。
電圧レンジは初期状態の500mV/divのままです。



拡大させたときの波形です。同じように変な波形が出ています。



上記のCAN信号のように、正常に表示できるときもあるので原因不明です。
ちなみにパソコンで同じように表示させた場合には、ゼロボルト一定で正しく表示されました。



演算機能にバグがある その2
CAL波形を演算させたときの表示です。
同じ波形で割り算なので常に1になるはずですが、変なノイズが表示されています。
プローブ調整のずれによるものだと、もう少し緩やかな波形になるはずです。
使うことのない演算子ですが、少し気になりました。
同じくパソコンで同じように表示させた場合には、1V一定で正しく表示されました。



カーソル有効時にCOPYボタンで画像が保存できない
COPYボタンを押すといつものように保存ファイル名を聞いてくるのですが、
Multipurposeの割り当てがカーソルに残ったままですので、
Enterができずに画像が保存できません。これは明らかにバグです。仕様ならゴミです。



電源コードが太い
電源ケーブルはパソコン用と同じものを使用します。
電力を使うこともないので、メガネケーブルでよいのではないかと思います。
バッテリ駆動に対応して欲しい
これは要望ですが、これだけ携帯性が良いとバッテリ駆動に対応して欲しいです。
色々な場所で少しだけ波形を取りたいシチュエーションは、色々とあると思います。
例えばクルマの中や外で波形を取りたいときに、AC100V電源を準備するのは面倒です。
空冷ファンもなく発熱もしないようですので、消費電力は低いと思います。
単3ニッケル水素電池6本くらいで動かせるようにして欲しいです。
10GHz、30GS/sを3万円で
これも要望ですが、例えばSATA 6Gbpsの波形を取りたい場合は、30GS/s以上の能力が必要です。
難しいのは理解していますが、是非とも実現させて欲しいです。



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