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No.0008 2018.10.20
燃えたタンタルコンデンサ 実例1
□1.電源を入れた瞬間、バチっと
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掃除をしていたら出てきたグラフィックボード。
Creative 3D Blaster GeForce CT6970
初代 GeForceです。
動くかな?と思い、マザーボードに挿して電源を入れた瞬間
バチっという音と共に焦げ臭いにおいが。
ボードのコネクタ付近が蚊取り線香のように赤く発熱していました。
慌てて電源を切り、ボードを抜いてみると部品が燃えていました。
シルク印刷にC99とあるのでコンデンサです。
セラミックコンデンサが燃えるのか?と疑問に思いつつ、
近くのC102を見るとタンタルコンデンサのようなものが実装されています。
四級塩も似たようなケーシングの場合もありますが、この基板は1999年製造のようですので時代的に少し合いません。
燃えたコンデンサと足の形状が一緒ですので、どうやらC102と同じような物が載っていたようです。
C102のチップ表面には「A106 ZIZ」という表記があります。
調べたところ、最初の英文字は耐圧を表示するもので(G:4V、J:6.3V、A:10V、C:16V、D:20V)
のようです。C102は3.3V VCCのパスコンとして使用されています。
ちなみに隣に並んでいるC100とC101のセラコンは、5Vのパスコンです。
C99は12V系ですので、CかDであると推測されます。
106はセラコンと同じように読むようですので、10x106pFで10μFとなります。
ZIZは分かりませんでした。
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□2.12Vラインの入り口に、かつモーター負荷にタンタルコン
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タンタルコンデンサは燃えることで有名です。
原因としては、過電圧、逆電圧、サージ等の印加、
電源ラインの急激な負荷変動による内部電流増加(連続的な充放電)
などが挙げられます。
内部電極にAg銀が使用されている場合、湿度によるイオンマイグレーションが起きて
ショートモードで発火する場合もあるようです。
しかしタンタルコンが恐ろしいのは、普通の素子表面や基板にできる
イオンマイグレーションやウイスカのようにショートしても発熱によってすぐに断線することがなく、
一度ショートするとショートする面積が大きくなり、発熱してもショートし続けることです。
燃えたタンタルコンをAGP端子のピンアサインまで追っていくと、
上記でも説明しましたが12V電源の入り口にパスコンとして使用されていることが分かりました。
ざっくり書くと以下の回路図です。
基本的にAGPでは3.3Vをメイン電源として使用するので、5Vや12Vは補助電源的に使用します。
AGP端子での各電源の並列の割り当てピン数は、12V:1個、5V:2個、3.3V:8個となっています。
ご存知のように冷却ファンはモーターですので、ON時の回り始める瞬間に電力最大となります。このとき、瞬間的に電流が足りなくなるので、近くのパスコンから電流が供給されることになります。また、回転時には、マグネットや極性の反転に合わせて負荷変動があり、電源にわずかなリップルノイズが載る場合があります。「冷却ファン ノイズ 波形」でGoogle検索をすると、オシロでの波形データの例がたくさん出てきます。
この燃えた素子の端子間抵抗を測定したところ、3.1Ωでした。
12V系電源ですので、約3.87A(46W)が流れていたことになります。
タンタルコンのショートモードといえば0Ωになるイメージですが、実際は抵抗値を持つようです。
この場合、例えば10〜15Aのヒューズ等の保護素子を付けたり、
シャント抵抗等を使用して電流を監視する保護回路を付けても機能しないことになります。
ATX電源も保護回路が働かず、許容範囲の負荷として電気を流し続けることでしょう。
実際に今回も該当部分はバチバチと赤く燃えつつも、パソコン自体は普通に起動しました。
気づかなかった場合はマザーボードや周辺のケーブルがある程度焼損していた可能性があります。
最悪は火災になっていたかもしれません。
今ではタンタルコンが燃えることは一般的に知られていますが、
EMC特性の魅力に負けて未だに安易に使おうとする人がいることもまた事実です。
回路設計でタンタルコンが燃えないように保護回路を考慮したとしても、
今回のようにショートモードの内部抵抗を想定して設計をしている人が
果たしているのかな?と思います。
安全に壊れるように設計することをフェールセーフと言います。
しかしそこまで想定できるなら、苦し紛れに使うのがタンタルコンだと思いますので
そもそも使う必要がないでしょう。
世の中にタンタルコンが搭載された製品が溢れていると思うと、恐ろしくて仕方ありません。
国は、リチウムバッテリーのようにタンタルコンデンサを規制すべきではないでしょうか?
現状は何の規制もありません。
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