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JIS C 62623:2014 パーソナルコンピュータの消費電力測定方法
2016.4.28 


パソコンの消費電力測定方法


※ 内容を簡単に概要をまとめたものです。内容の正確さは保証しません。
※ 必ず原文を確認してください。







□1.規格の目的

JIS C 62623 は、IEC 62623:2012 に準拠したパソコンの消費電力の測定、算出方法を規定するものです。



□2.できること

この規格でできることは、以下の2つがあります。
a) パソコンの各動作状態における平均実効消費電力 [W] の測定
b) 年間の標準消費電力量 TEC(Typical Energy Consumption) [kWh/年] の算出



□3.対象

試験対象となる機器は、デスクトップ型パソコンやノートパソコンなどです。
ディスプレイ一体型、タワー型パソコンなども含まれます。



□4.消費電力の求め方

 以下の手順で行います。




□5.測定に必要なもの

電力の測定には、以下の機材が必要です。

・実効電力計
a) サンプリング能力は、1S/s以上
b) 測定するパソコンの瞬間的な最大電力の3倍以上が測定可能である
c) 1回の測定中に、900サンプリング以上が記録できる
d) 電力と同時に時刻もしくは測定時間が1秒単位以下の小さな間隔で記録できる
e) 実効電力RMS以外の以下の値のうち2つ以上が同時計測できる
・電圧
・電流
・力率
f) 許容される測定誤差
1W以上: ±2%以内
1W未満: ±0.02W以内
g) 要求される分解能
10W以下: 0.01W以下
10Wを超えて100W以下: 0.1W以下
100Wを超える場合: 1W以下
h) 実効電力RMSの測定単位は、Wを基本とする。
小数点3位以下は四捨五入される
ただし、10W以上100W未満のときは小数点2位を四捨五入する。
100W以上のときは小数点を四捨五入して表示する。

・交流安定化電源
a) 測定条件の電圧や波形が出力できる

・照度計(照度センサが付いているノートPC等で、周囲の輝度によって明るさ調整機能がある場合のみ)
a) 分解能は、250lxが測定可能なレンジにて10lx以下
b) 精度は、250lxが測定可能なレンジにて±5%以下



□6.測定条件

電力の測定は、以下の環境下で行います。

a) 交流安定化電源の出力電圧

【最大電力が1500W以下の場合】
 電圧: 100±1V
 周波数: 50±0.5Hz (60±0.6Hzでも可)
 全高調波歪: 2%未満

【最大電力が1500Wを超える場合】
 電圧: 100±4V
 周波数: 50±2Hz (60±2.4Hzでも可)
 全高調波歪: 5%未満

電源電圧の周波数について50Hzもしくは60Hzのどちらかを選ぶようになっていますが、本規格の消費電力は統計的手法を根拠として用いています。総務省統計局による平成26年10月現在の人口統計において静岡県370万人を除いて比較した場合、東日本の50Hz地域6037.7万人、西日本の60Hz6299万人とほぼ均衡しています。どちらを選定するか難しいところですが、日本では東京が基準や根拠となるので50±0.5Hzで行うべきです。もしくは両条件で行うべきです。実際に冷蔵庫等は、カタログ仕様にそれぞれの消費電力が併記されています。

b) 温度条件は、23±5℃
c) 湿度条件は、10〜80%内の任意の値
d) 周囲照度は、照度センサが付いているノートPC等で、輝度によって明るさ調整機能がある場合に必要です。
画面表面位置にて250±50Lx となるように調整する必要があります。
e) 消費電力は、パソコンを構成する各ハードウェアのバージョンやリビジョンによって異なる場合があります。
例えば同じ品番のCPUであっても、リビジョンが異なると消費電力が異なる場合があります。
ドライバやファームウェアのバージョンやリビジョンによっても異なる場合があります。
例えばグラフィックカードのドライババージョンをアップデートしたときに、消費電力が変化する場合があります。
これらのバージョンやリビジョンは、管理され、製品出荷時の構成と同一である必要があります。
例えばエンジニアリングサンプル版の場合、量産品と仕様が異なる場合があります。



□7.測定環境

測定環境は、パソコンのタイプによって異なります。

(1) 共通事項
デスクトップ画面の背景色は、灰色(RGB値で130,130,130)のビットマップを壁紙として使います。
画像サイズは、デスクトップ画面サイズとします。
OSや周辺機器の電源管理機能について、一定時間放置後に意図しない休止状態やスリープ状態にならないように、
タイマー機能等の該当機能を無効にします。

(2) デスクトップ、タワー型の要件
ディスプレイモニターの電源は、電力計に接続してはいけません。
マウス、キーボードは接続した状態にします。
(標準で付属しない場合は、推奨品もしくは任意で選んだ機器を使用する。)
2つ以上のLANがある場合は、1つだけ接続します。
無線、有線どちらを選択してもかまいません。規格において優先順位はありません。
物理的な接続のみでなく、論理的にネットワークに接続した状態にします。
例えば、DHCPにてIPアドレスを取得して、TCP/IPにて通信可能な状態にします。
電力の測定中に一定の容量分MB/secのパケットを流し続けるなどの通信負荷を掛ける必要はありません。
スイッチングハブは、パソコン本体側の 最高の通信速度に対応できる物を使用します。
1000BASE-T/100BASE-TX対応の 場合は、1000BASE-Tが対応できる物を使用します。
LANに省電力機能があり、その機能を有効にするときにスイッチングハブ側も対応している必要があるときは、
対応しているものを使用します。



(3) ノートPC、ディスプレイ一体型の要件
バッテリーは、外した状態で行います。 (外せないタイプは満充電100%であること)
タッチパッド等のポインティングデバイスがが搭載されている場合は、マウスを接続しません。
2つ以上のLANがある場合は、1つだけ接続します。
無線、有線どちらを選択してもかまいません。規格において優先順位はありません。
物理的な接続のみでなく、論理的にネットワークに接続した状態にします。
例えば、DHCPにてIPアドレスを取得して、TCP/IPにて通信可能な状態にします。
電力の測定中に特定の容量分MB/secのパケットを流し続けるなどの通信負荷を掛ける必要はありません。
無線アクセスポイントは、パソコン本体側の 最高の通信速度に対応できる物を使います。
例えばIEEE802.11a/b/g/n/ac対応の場合は、acが対応できる物を使います。
LANに省電力機能があり、その機能を有効にするときにスイッチングハブ側も対応している必要があるときは、
対応しているものを使用します。
輝度(明るさやコントラスト)設定は、自動設定機能を実行後の標準設定とします。 自動設定機能が無い場合は、出荷時の状態にします。


□8、各動作モードの状態

 パソコンの消費電力は、以下の5つの状態をそれぞれ測定します。


(1) アクティブモード
※アクティブモードはTEC算出時のパラメーターとして使いません。基本的に測定不要です。

1) パソコンを起動して、OSにログオンした状態にします。
2) その状態で開いてるウィンドウはすべて閉じます。
3) ウィルススキャンソフトのタイマースキャン設定等の、ある日時に達したときに定期的に処理を開始する機能は、すべてオフにします。CPUの負荷状況に応じて処理を開始するソフトウェアの場合、プリインストールされる場合はすべて初期状態とします。
4) スタートアップに登録されていてバックグラウンドで動いているソフト、タスクアイコンに表示されているソフト等は、初期設定状態のままにしておきます。
5) ショートアイドルモードにします。
6) CPUファン等の温度によって可変する機能が安定するように、15分間その状態を維持します。
7) ノート型パソコンのように一定の温度以下のときにCPUファンが停止するタイプも、同様にショートアイドルモードを維持して内部温度を安定させます。
8) 有効作業負荷プログラムを実行します。
プログラム(ソフトウェア)は、規格書 JIS C 62623:2014、5.6.4より算出した消費電力以上で安定となるように、 CPU、メモリ、グラフィック、HDD等に負荷(演算、Read、Write、)を掛ける処理をします。   
9) プログラム処理中の消費電力を測定します。


(2) ショートアイドルモード
1) パソコンを起動して、OSにログオンした状態にします。
2) その状態で開いてるウィンドウはすべて閉じます。
3) ウィルススキャンソフトのタイマースキャン設定等の、ある日時に達したときに定期的に処理を開始する機能をすべてオフにします。CPUの負荷状況に応じて処理を開始するソフトウェアの場合、プリインストールされる場合はすべて初期状態とします。
4) スタートアップに登録されていてバックグラウンドで動いているソフト、タスクアイコンに表示されているソフト等は、初期設定状態のままにしておきます。
5) ノートPCや一体型PCの場合、モニターの輝度を調整します。
ノートPC: 90cd/m2以上
デスクトップ: 150cd/m2
6) ショートアイドルモードにします。ACPIは、S0です。
割り込み処理については、すべてに反応できる状態です。
以下の状態を指します。
・CPUが無負荷時に低消費電力化するためにクロックダウンしていない
・HDDの回転が停止したり低回転に移行していない(標準回転)
・ディスプレイの電源を切る機能が働いていない(モニター信号出力がONされている)
7) CPUファン等の温度によって可変する機能が安定するように、15分間その状態を維持します。
ノート型パソコンのように一定の温度以下のときにCPUファンが停止するタイプも、同様にショートアイドルモードを維持して内部温度を安定させます。
8) 消費電力の測定を開始します


(3) ロングアイドルモード
1) パソコンを起動して、OSにログオンした状態にします。
2) その状態で開いてるウィンドウはすべて閉じます。
3) ウィルススキャンソフトのタイマースキャン設定等の、ある日時に達したときに定期的に処理を開始する機能をすべてオフにします。CPUの負荷状況に応じて処理を開始するソフトウェアの場合、プリインストールされる場合はすべて初期状態とします。
4) スタートアップに登録されていてバックグラウンドで動いているソフト、タスクアイコンに表示されているソフト等は、初期設定状態のままにしておきます。
5) ロングアイドルモードにします。
ロングアイドルとは、以下のような状態を指します。ACPIは、S1ではなくS0です。
割り込み処理については、すべてに反応できる状態です。
・CPUが無負荷時に低消費電力化するためにクロックダウンしている
・HDDの回転が停止したり低回転に移行している
・ディスプレイの電源を切る機能が働いている(モニター信号出力がOFFされている)
6) CPUファン等の温度によって可変する機能が安定するように、15分間その状態を維持します。
ノート型パソコンのように一定の温度以下のときにCPUファンが停止するタイプも、同様にロングアイドルモードを維持して内部温度を安定させます。
7) 消費電力の測定を開始します


(4) スリープモード
1) パソコンを起動して、OSにログオンした状態にします。
2) その状態で開いてるウィンドウはすべて閉じます。
3) ウィルススキャンソフトのタイマースキャン設定等の、ある日時に達したときに定期的に処理を開始する機能をすべてオフにします。CPUの負荷状況に応じて処理を開始するソフトウェアの場合、プリインストールされる場合はすべて初期状態とします。
4) スタートアップに登録されていてバックグラウンドで動いているソフト、タスクアイコンに表示されているソフト等は、初期設定状態のままにしておきます。
5) ロングアイドルモードにします。
ロングアイドルとは、以下のような状態を指します。ACPIは、S1ではなくS0です。
割り込みについては、すべてに反応できる状態です。
・CPUが無負荷時に低消費電力化するためにクロックダウンしている
・HDDの回転が停止したり低回転に移行している
・ディスプレイの電源を切る機能が働いている
 (モニター信号出力がOFFされている)
・CPUファンは、CPU温度が無負荷状態で安定して、
 内部温度が安定しているときの回転数で一定となる状態にします。
6) CPUファン等の温度によって可変する機能が安定するように、15分間その状態を維持します。
ノート型パソコンのように一定の温度以下のときにCPUファンが停止するタイプも、同様にロングアイドルモードを維持して内部温度を安定させます。
7) スリープモードにします。ACPIは、S3です。
8) 消費電力の測定を開始します


(5) オフモード
1) パソコンを起動して、OSにログオンした状態にします。
2) その状態で10minほど放置します。
放置する目的は、起動時の初期処理を完了させ、HDDへの頻繁なアクセスを終了させるためです。
3) シャットダウンします。
4) 消費電力の測定を開始します。

ACコンセントを差し込んだ初期状態はオフモードではありません。
ACコンセントを差し込んだ後に、1度以上の起動とシャットダウンを行い、その間に1度もACコンセントを抜いていない場合の電源OFFの状態を指します。この場合、ACPIはS4ではなくS5となります。S4は、一般的に休止状態を指します。



□9.測定した消費電力の妥当性
測定した消費電力の妥当性の判断は、以下の式が成り立つことを確認して決めます。
成り立たない場合は、その数値に該当するモードでの測定が正しくない可能性があります。




□10.年間の標準消費電力量TECの計算方法

測定した各モードの平均消費電力を以下の式に代入して計算します。



off、 Tsleep、Tidle、Tsidle、Twork は、以下の値を使用します。




off 統計によって求められた、製品がオフモードになる年間の割合
sleep 統計によって求められた、製品がスリープモードになる年間の割合
idle 統計によって求められた、製品がロングアイドルモードになる年間の割合
sidle 統計によって求められた、製品がショートアイドルモードになる年間の割合
work 統計によって求められた、製品がアクティブモードになる年間の割合
Poff 測定したオフモードの平均消費電力
Psleep 測定したスリープモードの平均消費電力
Pidle 測定したロングアイドルモードの平均消費電力
Psidle 測定したショートアイドルモードの平均消費電力



□11、消費電力の安定状態とは?

求める消費電力の平均値は、消費電力が安定している部分を抽出して算出します。

附属書 F の測定方法のうち、推奨される『サンプル抽出方法』で測定データをまとめてみます。 例として、15minサンプリングした結果が下のグラフとします。このグラフは900ポイント(900サンプリング)以上のプロットによって書かれています。最初の5minは、問答無用で破棄します。残りの10minについて回帰直線を引き、傾きが1%(±0.01)未満なら 『安定している』 と呼べるようです。

『安定していない』場合は、測定時間を延長して後方にずらして15minの間隔を抽出します。 ずらしても安定していない場合で、その変動に周期性がある場合は、その1周期あたりの平均値を消費電力とします。 1周期あたりの平均値を4周期分求めて、その平均値の回帰直線の傾きが1%(±0.01)未満なら 『安定している』 と呼べるようです。









□12、実際の消費電力との差

附属書Aにて、算出したTECと実際の消費電力との差について詳細が記載されています。
TECは、オフィスでの想定値であること、3Dゲーム用途などのヘビーユーザーが除外されていることなどが記載されています。
正当性の根拠として、クルマのJC08モードの燃費と実際の燃費に差がある、通勤のみで使用している人とサーキット走行している人では燃費がまったく異なる、ほとんどの人がクルマを通勤のみで使用しているといった類似性が挙げられています。
よって例えばゲーマー向けPCを販売する場合は、JIS C 62623:2014の附属書Bのプロファイル値ではなく、附属書Cに従って独自にプロファイルを調査する必要があります。この場合、TECの算出式は以下のようになります。




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