JIS C 60068-2-66:2001 環境試験方法−電気・電子−高温高湿,定常(不飽和加圧水蒸気) 2016.4.28 ※ 内容を簡単に概要をまとめたものです。内容の正確さは保証しません。 ※ 必ず原文を確認してください。 □1.この規格の目的 この規格は、高温高湿試験を実施するときに、IEC 60068-2-66:1994 の要求事項に準拠するためのものです。 高温高湿試験は、加速試験です。供試品が高温高湿環境下に一定の時間晒された後に、問題が発生しないことを確認するために行います。 問題とは、供試品の破壊、特性パラメーターの想定外な変化、機能の異常動作などを指します。このときの相対湿度は、結露しない高湿状態(不飽和加圧水蒸気)を想定しています。 供試品は、防水処理、封止密閉処理、ハーメチックシールやハーメチックコネクタが使用されていない物を対象としています。 具体的には、樹脂封止した集積回路、半導体素子のアルミニウム金属の腐食を想定した加速試験です。 □2.試験に必要なもの ・以下の条件を満たす恒温槽 a) 試験条件の温度、湿度、気圧(圧力)が制御、維持できる b) 供試品の寸法、発熱量に対して十分な容量を持つ c) 試験中に槽内で結露しない構造になっている d) 槽内が結露したとき、供試品に水滴が落ちない構造になっている e) 試験槽の材質は、耐食性の高いものが用いられている f) 試験槽の材質は、供試品の腐食を促進させないものが用いられている g) 試験温度(設定温度)の±1.5℃の変動差で制御できる h) 試験湿度(設定湿度)の±5%の変動差で制御できる i) 槽内の風量は0.5m/s未満である ・供試品の周囲に設置する器具や容器 要求仕様等で設置器具や容器などが規定されている場合は、それらも槽内に設置します。 構造や材質は、以下の条件を満たす必要があります。 a) 熱容量が小さいこと ※一般的には非金属レベルの熱容量まで下げる必要がある b) 試験中に結露しない構造になっている c) 仮に結露したとき、供試品に水滴が落ちない構造になっている d) 試験槽の材質は、耐食性の高いものが用いられている e) 材質は、供試品の腐食を促進させないものが用いられている □3.試験方法 【共通条件】 ・本試験は結露させないための高湿試験です。試験前、試験中、試験後に絶対に結露させてはいけません。 ・大気圧では試験ができません。 ・供試品は、基本的に非梱包の状態で行います。 ・出荷時に梱包材で密封され、輸送保管時の影響を確認したい場合は、梱包状態で行います。 ・槽内の空気は、揮発性の溶剤系の気体などで汚染されていないことが必要です。 ・試験は、汚れ等が取り除かれ、清掃されている槽内で行います。 ・供試品を通電させる場合は、表面温度が試験温度より2℃以上上昇させないように、以下の措置を取ります。 発熱が試験ストレスを低下させるため、密閉されていない内部で著しく発熱する部位がある場合も同様に対応します。 a) 供試品の機能が正常となる仕様値の下限(最も発熱しない条件)で行う。 b) 仕様値の下限でも発熱する場合は、周期的に機能や通電をOFFさせることで抑える。 ON/OFFの時間サイクルに要求仕様等がない場合は、3h:OFF→1h:ON のサイクルで実施する。 c) 本試験は試験環境下での正常動作を確認する試験ではないため、供試品の機能が正常とならない仕様値の下限を下回る条件まで電圧を落とすことも検討します。 ・試験温度は、周囲温度(雰囲気温度)です。湿度や気圧も同様です。 供試品内部ではありません。湿度や気圧が測定できる部位で温度も管理します。 ・試験温度は以下の温度から最適な温度を選定して行います。 温度は供試品の設計値を超えないようにします。 封止素材は、ガラス転移温度などの臨界温度に達しないように設定します。 テーラリングや加速検証、要求仕様等で試験温度が予め決まっている場合は、その温度で行います。 試験温度[℃]: 110、120、130 試験温度の許容差[℃]: ±2 ・試験湿度は、以下の通りです。 相対湿度[%]: 85 相対湿度の許容差[%]: ±5% ・加湿には、蒸留水または脱イオン水を使用します。 これらの水は、23℃のときに0.5MΩcm以上、pH値は6.0〜7.2である必要があります。 試験槽の水路内に長期間放置するとpH値が下がるため、試験前には排水循環させる必要があります。 ・試験時間は、試験温度によって異なります。 以下から最適な時間を選定して行います。 テーラリングや加速検証、要求仕様等で試験時間が予め決まっている場合は、その時間で行います。 110℃のとき 試験温時間[h]: 96、192、408 120℃のとき 試験温時間[h]: 48、96、192 130℃のとき 試験温時間[h]: 24、48、96 ・試験時の気圧は以下の通りです。 許容差は規定されていませんが、最小となるように調整します。 試験中の最小値、最大値、平均値などを試験記録として保存します。 110℃のとき 気圧[hPa]: 1200 120℃のとき 気圧[hPa]: 1700 130℃のとき 気圧[hPa]: 2300 (1)前処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って前処理をします。 (2)初期測定 初期測定を行います。 一連試験の場合は、前試験の最終測定の値が代用できる場合があります。 その場合、前試験の後処理後の状態とこの試験の前処理後の状態が一致している必要があります。 (3)試験前 1) 試験槽内が標準大気条件のときに供試品を設置します。 要求仕様等で設置器具や容器などが規定されている場合は、それらも槽内に設置します。 試験中に供試品を通電させる必要がある場合は、配線等も設置します。 通電の必要性の有無は、要求仕様等によります。 2) 槽内の温度と湿度を試験条件まで上げます。 変化率は、1.5h以内に安定となるように調整します。 ただし試験時間が48h以上の場合は、3h以内でも良いとされています。 急激な変化は供試品にストレスを与えるため、限度時間の80〜90%で安定するように調整します。 上昇中は、温度が瞬間的にも試験温度を超えないようにします。 上昇中は、湿度が瞬間的にも試験湿度を超えないようにします。 上昇中は、気圧が瞬間的にも試験気圧を超えないようにします。 上昇中は、供試品を絶対に結露させてはいけません。 (4)試験中 【共通事項】 試験中の予め設定した時間に、中間測定を行うことがあります。 要求仕様等で定められている場合などに行います。 【中間測定を行わない場合】 1) 温度や湿度、気圧が試験条件で安定すれば試験開始となります。 供試品を通電させる必要があるときは、このときにONします。 【中間測定を行う場合】 1) 温度や湿度、気圧が試験条件で安定すれば試験開始となります。 供試品を通電させる必要があるときは、このときにONします。 2) 試験開始から規定の時間経過後に標準大気条件に戻します。 変化率は、1.5h以内に安定となるように調整します。 急激な変化は供試品にストレスを与えるため、限度時間の80〜90%で安定するように調整します。 下降中は、温度が瞬間的にも試験温度を超えないようにします。 下降中は、湿度が瞬間的にも試験湿度を超えないようにします。 下降中は、気圧が瞬間的にも試験気圧を超えないようにします。 3) 中間測定のための後処理を行います。 標準大気条件での放置時間は、以下の時間となります 放置時間 ≦ 4h - (試験条件から標準大気条件への変化時間) - (標準大気条件から試験条件への変化時間) - (中間測定の時間) 4) 中間測定を行います。 ※後処理前の測定は禁止されています。 5) 測定完了後、槽内の温度と湿度を試験条件まで上げます。 変化率は、1.5h以内に安定となるように調整します。 急激な変化は供試品にストレスを与えるため、限度時間の80〜90%で安定するように調整します。 上昇中は、温度が瞬間的にも試験温度を超えないようにします。 上昇中は、湿度が瞬間的にも試験湿度を超えないようにします。 上昇中は、気圧が瞬間的にも試験気圧を超えないようにします。 上昇中は、供試品を絶対に結露させてはいけません。 6) 温度や湿度、気圧が試験条件で安定すれば試験再開となります。 2) で標準大気条件に戻し始めてから、4h以内に安定するように対応します。 (5)試験後 1) 試験開始から規定の時間経過後に標準大気条件に戻します。 急激な変化は供試品にストレスを与えるため、ストレスを与えないように調整します。 下降中は、温度が瞬間的にも試験温度を超えないようにします。 下降中は、湿度が瞬間的にも試験湿度を超えないようにします。 下降中は、気圧が瞬間的にも試験気圧を超えないようにします。 2) 供試品を通電していた場合、標準大気条件で安定したらOFFします。 (6)後処理 ・後処理は、試験槽内もしくは標準大気条件下で行います。 ・標準大気条件で2〜24h放置します。 ・実際の放置時間は、試験記録として保存します。 (7)最終測定 初期測定と同じことを実施します。 □4.良否判定 【試験中(中間測定)】 ・供試品の外観を目視で確認し、問題ないこと。 ・供試品の機能を確認し、正常に機能すること。 ・供試品の性能パラメーターに、許容を超える変化がないこと。 【試験後】 ・供試品の外観を目視で確認し、問題ないこと。 異常確認時および必要性がある場合は、光学顕微鏡にて素子リードや端子の腐食、 はんだの腐食、マイグレーションの有無等を確認する。 ・供試品の機能を確認し、正常に機能すること。 ・供試品の性能パラメーターに、許容を超える変化がないこと。 □5.その他 この規格は矛盾や実現性が難しい記述が見られるため、自主的な解釈が必要かもしれません。 規格で明文化されている部分は、内容が誤りでも暗黙的に変更してしまうと、準拠とならない場合があります。 規格で明文化されている部分を変更や削除して運用する場合は、試験結果報告書などの試験記録にその内容と理由を記録しておきます。 ISO 9001やTS16949にて該当する管理文書が存在する場合には、そちらにもその内容と理由を記載します。 □6.安全衛生 試験中に槽の扉を開くと、高熱の水蒸気が噴き出して重篤な火傷を負う可能性があります。 重大な労働災害に繋がる可能性があるため、十分な注意喚起が必要です。 労働安全衛生法59条の対象となる事前教育が必要かもしれません。 |
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