JIS C 60068-2-31:2013 環境試験方法−電気・電子−第2−31部:落下試験及び転倒試験方法(試験記号:Ec) 2016.4.28 ※ 内容を簡単に概要をまとめたものです。内容の正確さは保証しません。 ※ 必ず原文を確認してください。 □1.規格の目的 この規格は、落下試験を実施するときに、IEC 60068-2-31:2008 の要求事項に準拠するためのものです。 □2.試験の目的 この試験は、供試品が使用中もしくは修理作業中に、不注意や乱雑な扱いによって発生する打撃、衝撃、落下などにより 受ける影響を確認するものです。 □3、例外 輸送中に継続的に受ける衝撃の影響を確認したい場合は、JIS C 60068-2-55 バウンス試験で行います。 設置した製品が受ける衝撃の影響を確認したい場合は、JIS C 60068-2-27 衝撃試験で行います。 □4、対象 試験対象となる機器は、ハンディ端末、ポータブル機器、目覚まし時計などです。 例えばデスクトップ型パソコンや液晶テレビ等の設置して使用する機器は、日常的に落としたり衝撃を与えることがないため、試験を実施しても価値のある試験結果が得られない可能性があります。 □5、試験の種類 試験には3種類あります。 a) 落下および転倒試験 b) 自然落下試験 方法1 c) 自然落下試験 方法2 自然落下試験 方法1は、使用中や持ち運び時に発生する落下衝撃の影響を確認するためのものです。発生の頻度は、極めて低いものが対象です。持ち運び時の具体例としては、フォークリフト等の積み卸しなどが想定されます。トラック荷台からの落下、荷物の放り投げ、トラック走行中の路面からの衝撃などは想定していません。 自然落下試験 方法2は、使用中や持ち運び時に繰り返し発生する落下衝撃の影響を確認するためのものです。発生の頻度は、ある程度発生するものが対象です。 落下および転倒試験は、机上等での修理作業や使用中に発生する可能性のある打撃や衝撃の影響を確認するためのものです。供試品が安定して置ける底面積があり、重心が低い場合には試験実施の必要性が低くなります。 例えば下図のような三面図の製品の場合を考えます。重心Gから底面までの垂線距離gから底面の最も短い辺cの長さを割った比率 c-g が0.25未満の場合は、転倒の可能性が低いため試験の必要性が低くなります。 供試品の高さd から底面の最も短い辺cの長さを割った比率、高さ比が0.5未満の場合は、転倒の可能性が低いため試験の必要性が低くなります。円筒形の場合は、直径の最も短い距離が対象となります。 c -g比 = (重心Gから底面までの垂線距離 g )÷(底面の最も短い辺 c) 高さ比 = (供試品の高さ d )÷(底面の最も短い辺 c) □6、試験に必要なもの ・以下の条件を満たす試験台 a) コンクリートや鋼など、硬く剛性がある b) 試験台の表面は、水平で滑らかである ※供試品が500kgを超える場合、水平傾斜が2°以内であること c) コンクリート製で凸凹がある場合、表面に厚さ25mm以上の鉄板が固定してあるか埋め込んである ※供試品が500kgを超える場合、鉄板の厚さは40mm以上、ブリネル硬度は90〜300であること d) 試験台の防振基礎の質量は、供試品の20倍以上である ・落下および転倒試験の角落下を行う場合のスペーサー a) 材質は木材など b) 高さは10mm、20mm の2つが必要 c) 幅や奥行きには規定がないが、供試品への影響が最小となるようにする d) スペーサーは、試験条件の高さが適用できる試験専用の固定具などで代用できる ・自然落下試験 方法2を行う場合の専用試験機 寸法や材質、機能等は、JIS C 60068-2-31:2013 附属書Aを満たすもの □7、試験方法 (落下および転倒試験) 【共通事項】 ・標準大気条件で行います。 ・室外などの管理できない環境下で実施する場合も、温度、湿度、気圧、場所を試験記録として保存します。 ・供試品は、基本的に非梱包の状態で行います。 ・落下高さの許容差は、±10%です。 ・本試験は修理中や電池交換等のメンテナンス中も想定しているため、 カバーやコードなどを接続するかどうかを予め決めておきます。 ・落下および転倒の回数は、4回までとします 転がり続けることや他の面に衝撃が加わることを防止するため、転倒させる軸辺にヒンジ治具を付ける、転倒させる軸辺の側面と試験台をテープで止める、引き綱を軸辺側面に取り付ける等の措置を検討します。 (1)前処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って前処理をします。 (2)初期測定 初期測定を行います。 一連試験の場合は、前試験の最終測定の値が代用できる場合があります。 その場合、前試験の後処理後の状態とこの試験の前処理後の状態が一致している必要があります。 (3)試験前 ・試験台に異常がないか確認します。 ・試験台の周囲に邪魔な物がある場合、移動します。 ・試験台が汚れている場合、清掃します。 (4)試験中 【面落下】 1) 供試品を製品仕様の基準状態となるように設置します。 2) その状態から、底面の1辺を軸にして傾けた状態で固定します。 3) 傾ける高さもしくは角度は、以下から選定します。このときの高さとは、底辺の軸辺の対称となる辺から試験台までの垂直長さです。基準として高さにするか角度にするかは、厳しさの小さい方を選びます。 傾ける高さ h [mm] : 25、50、100 傾ける角度α [°] : 30 4) 固定を取り除き、上記の条件で落下させます。 このとき、力を加えて押し倒すのではなく、自由落下となるようにします。 5) 底面の軸辺を他の辺に変更して、同じ条件で落下させます。 通常は4辺の四角形の構造であるため、それぞれの辺で合計4回行います。 【角落下】 1) 供試品を製品仕様の基準状態となるように設置します。 2) その状態から、底面の1辺を軸とした角に10mmのスペーサーを挟み込みます。 3) もう片側の角に20mmのスペーサーを挟み込みます。 4) スペーサーを挟んでいる辺を軸にして、傾けた状態で固定します。 5) 傾ける高さもしくは角度は、以下から選定します。このときの高さとは、底辺の軸辺の対称となる辺で、スペーサー10mm側の角から試験台までの垂直長さです。角度の場合は、スペーサー10mm側の供試品の側辺と試験台との角度になります。基準として高さにするか角度にするかは、厳しさの小さい方を選びます。 傾ける高さ h [mm] : 25、50、100 傾ける角度α [°] : 30 6) 固定を取り除き、上記の条件で落下させます。 このとき、横方向の力を加えて押し倒すのではなく、自由落下となるようにします。 7) 底面の軸辺を他の辺に変更して、同じ条件で落下させます。 通常は4辺の四角形の構造であるため、それぞれの辺で合計4回行います。 スペーサーを逆にして、底辺の各角に合計2回の衝撃が加わる方法は、本試験の適用外のようです。 【転倒】 1) 供試品を製品仕様の基準状態となるように設置します。 2) その状態から、底面の1辺を軸にして傾けた状態で固定します。 3) 固定する角度もしくは高さは、固定を取り除いたときに側面に倒れる最大の値となるようにします。 事前にその値を求めておきます。 4) 固定を取り除き、落下させます。 このとき、力を加えて押し倒すのではなく、自由落下となるようにします。 5) 底面の軸辺を他の辺に変更して、同じ条件で落下させます。 通常は4辺の四角形の構造であるため、それぞれの辺で合計4回行います。 (5)試験後 供試品の破損を進行させないように片付けて、測定環境に移動します。 (6)後処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って後処理をします。 (7)最終測定 初期測定と同じことを実施します。 □8、試験方法 (自然落下試験 方法1) 【共通事項】 ・供試品の梱包の有無は、想定する条件や要求仕様等によって異なります。 ・標準大気条件で行います ・室外などの管理できない環境下で実施する場合は、温度、湿度、気圧、場所を試験記録として保存します。 ・落下回数は、2回です。 テーラリングや要求仕様等で落下回数が決まっている場合は、その回数を行います。 ・落下させる高さは、供試品が非梱包の場合に表1より最適な値を選定して行います。 表1の太字は、JIS規格の推奨値です。 供試品が通函もしくは梱包されている場合は、表2から選定します。 表2のレベルは、落下の頻度と外部から受ける衝撃の大きさを示します。 レベル1は頻度が最も多く、かつ外部から受ける衝撃が最も大きい場合に適用します。 レベル4は頻度が最も少なく、かつ外部から受ける衝撃が最も小さい場合に適用します。 表2は、JIS Z 0200:2013 衝撃試験から参照しています。 テーラリングや要求仕様等で高さが決まっている場合は、その高さで行います。 (1)前処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って前処理をします。 (2)初期測定 初期測定を行います。 一連試験の場合は、前試験の最終測定の値が代用できる場合があります。 その場合、前試験の後処理後の状態とこの試験の前処理後の状態が一致している必要があります。 (3)試験前 ・試験台に異常がないか確認します。 ・試験台の周囲に邪魔な物がある場合、移動します。 ・試験台が汚れている場合、清掃します。 (4)試験中 1) 供試品を製品仕様の基準状態となる姿勢で、供試品を浮かせます。 ひもやロープでつり上げる、吸盤でつり上げる、固定具で挟み込んでつり上げる、手で持ち上げるなどの方法があります。 2) 供試品を落下させます。 このとき、自由落下となるようにします。 3) 規定の落下回数を繰り返します。 (5)試験後 供試品の破損を進行させないように片付けて、測定環境に移動します。 (6)後処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って後処理をします。 (7)最終測定 初期測定と同じことを実施します。 □9、試験方法 (自然落下試験 方法2) 【共通事項】 ・標準大気条件で行います ・室外などの管理できない環境下で実施する場合は、温度、湿度、気圧、場所を試験記録として保存します。 ・本体にケープル等を取り付けて使用する製品の場合は、すべて取り付けた状態で行います。 このときケーブルは100mmで切断します。 ・落下回数は以下から最適な値を選定して行います。 テーラリングや要求仕様等で落下回数が決まっている場合は、その値で行います。 落下回数 [回] : 50、100、200、500、1000 ・落下高さは以下から最適な値を選定して行います。 テーラリングや要求仕様等で落下高さが決まっている場合は、その値で行います。 高さによって寸法の異なる試験機が必要です。 落下高さ [mm] : 500、1000 ・落下の頻度は10回/min、試験機の回転数は5rpmです。 テーラリングや要求仕様等で落下頻度や回転数が決まっている場合は、その値で行います。 (1)前処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って前処理をします。 (2)初期測定 初期測定を行います。 一連試験の場合は、前試験の最終測定の値が代用できる場合があります。 その場合、前試験の後処理後の状態とこの試験の前処理後の状態が一致している必要があります。 (3)試験前 ・試験装置に異常がないか確認します。 ・試験装置の周囲に邪魔な物がある場合、移動します。 ・試験装置が汚れている場合、清掃します。 (4)試験中 1) 供試品を試験機に置きます。 2) 試験機を動作させて規定の回転数で回します。 (5)試験後 供試品の破損を進行させないように片付けて、測定環境に移動します。 (6)後処理 要求仕様や他の参照規格で予め決められている場合は、それに従って後処理をします。 (7)最終測定 初期測定と同じことを実施します。 □10.良否判定 【試験後】 ・供試品の外観を目視で確認し、問題ないこと。 ・供試品の機能を確認し、正常に機能すること。 ・供試品の性能パラメーターに、許容を超える変化がないこと。 □11.その他 試験結果報告書などの試験記録は、JIS C 60068-2-31:2013 8章 の a) 〜 r) までの項目が漏れなく記載されている必要があります。 □12.安全衛生 供試品が重量物の場合、供試品を足下に落としたり手に挟んだりして怪我をする可能性があります。 場合によっては、安全靴などの装備が必要です。 |
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