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No.2052 2021.2.13
もしも日本のクルマが電気自動車だけになってしまったら
□ 1.ガソリン車をEV車に置き換える?
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2020年頃のトレンドとして、「環境」を大義名分にしてEV車にシフトさせるという発言が、日本政府からもたらされました。どういうことなのか簡単に計算してみました。
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□ 2.EV車を走らせるのに必要な原発の数
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年間の自動車販売台数は、約460万台です。 ・・・(1)
自動車保有台数は、約8200万台です。 ・・・(2)
(2)÷(1)で、約18年で廃車にされることがわかります。
年間の平均走行距離は、約6316kmです。 ・・・(3)
EV車の平均燃費は、160Wh/km(=6.25km/kWh)くらいです。 ・・・(4)
エアコンや暖房を使用する一般的な条件です。
日本の代表的なEV車である、日産リーフの燃費と比べても同等だと思います。
年間の電力消費量は、(3)x(4)= 約1010kWh です。 ・・・(5)
これはリチウムイオンバッテリーから消費される電力です。
この電力を充電するのに必要なエネルギーを考えてみます。
簡単に例えると、スマホを充電すると機器が熱くなるのと同じです。スマホの1000倍の電池であれば1000倍発熱します。
例として新型リーフ(2019)について推定します。
効率の損失分は、すべて熱エネルギーに変換されます。
AC100VもしくはAC200Vの家庭用電力を直流に変換する必要があります。回路や部品、流れる電流に左右されますが、効率は90%くらいです。バッテリ電圧は350Vですので、整流した直流電圧は350V以上でないと電気が流れません。よって350V以上に昇圧します。
これも回路や部品、流れる電流に左右されますが、効率は80%以下です。昇圧する電圧を直接制御するのは難しいので、一度昇圧した後に、バッテリ電圧より少し高い電圧になるように制御します。効率は95%以下です。充電時はバッテリー自体が熱くなりますが、これも電気エネルギーの損失です。経路やバッテリーの劣化具合にもよりますが、効率は90%くらいです。バッテリーが発熱したままだと充電効率が下がり、バッテリーが劣化するので冷却システムを動作させます。冷却ファンや冷却水ポンプなどを動作させますが、充電電力に対する損失は1%以下だと思うので無視します。
これらの値と(5)から、
?×0.9×0.8×0.95×0.9 =1010kWh
?=1640kWh ・・・(6)
新車のガソリン車を販売禁止にした場合、
毎年 (1)x(6) = 7544GWh の電力源が必要です。 ・・・(7)
すべてをEV車に置き換えた場合、
(2)x(6) = 134480GWh の電力源が必要です。 ・・・(8)
出力138万kWの原子力1基当たりの
年間発電量(設備利用率80%)は、9700GWh です。 ・・・(9)
出典:東京電力 TEPCOレポート 2006 VOL.116 P11 エネルギーひとくちメモ より
出力138万kWは国内最大級であり、2021年時点で国内には4基しかありません。
新たに建設して稼働しなければならない年間当たりの原発数は、
(7)÷(9) = 0.78(約1基) です。
ガソリン車の走行を禁止した場合、
(8)÷(9) = 14基 の原発が必要です。
591万5000台につきフル稼働の原発1基が必要です。
東京、神奈川、埼玉の3都県の自動車保有台数は約900万台です。
受益者負担の観点で原発を建てるならば、まずは2基をこの3都県内に建てるべきでしょう。
福島第一原子力発電所事故は記憶に新しいですが、
その覚悟があってのEV推進なのでしょうか?
逆に言えば、自動車は膨大なエネルギーを使う悪の乗り物かもしれませんが。。。
ちなみに、
石油火力発電所の燃費は、3.91kWh/L くらいのようです。 ・・・(10)
(4)より、充電効率を考慮すると、
?×0.9×0.8×0.95×0.9 = 160Wh/km
?=260Whkm(3.85km/kWh) ・・・(11)
(10)、(11)より
3.85km/kWh×3.91kWh/L=15.1km/L となります。
ガソリンエンジンより火力発電所のほうが効率が良いと宣言しているサイト等や電力会社の資料を確認すると、
送電で5%のロスが発生するようです。
この送電損失を考慮した実際の燃費は14.3km/Lくらいです。
アクアのような最新のHV車より遥かに劣り、古いガソリン車と同等のようです。
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□ 3.なぜ事実を隠して、EVを推進するのか?
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ニュースを見ていると、EVは素晴らしい、EVは環境に良いと
嘘ばかり言い、上記のような事実は一切報道しません。
政府もEVを推進するようです。
なぜでしょうか?理由は様々ですが、以下が推測されます。
(1)原発利権
(2)中東依存の脱却
(3)EV関連投資の回収
(4)環境団体の利害
原発利権は、上記の通り新しい原発が必要です。
既存の原発は老朽化が進んでいるため、既存の原発を再稼働させる場合でも
いずれ建て替えが必要でしょう。
世界規模で考えれば、2019年の世界の自動車販売台数は9136万台であり、原発15基が必要です。
東芝、日立、三菱は忙しくなり、関連下請けも忙しくなるでしょう。
日本の原発業界が潤い、止まっていた六ケ所村の再処理工場や
高速増殖炉計画も推進されるでしょう。
中東依存の脱却は、昔からEUと中東の仲が悪いためです。
EUからしたら、できれば中東にお金を払いたくないのです。対応の悪いお店で、かつ昔に万引きした思い出もあるお店で買い物をしたくないのです。日本は中東と仲が良く、イランとも伝統的に敵対関係にありません。フセイン大統領のイラクとも良好な関係でした。
日本は、EUの政治の思惑に巻き込まれているのです。
EV関連投資の回収については、ファンドや投資家は、
EV関連に多額の投資をしています。テスラは新興メーカーですが、
他にも様々なEVに特化した部品メーカーがあります。
日本電産も将来のEV化に向けて、積極的に企業買収を進めています。
もしEV化が断念されたらどうなるでしょうか?
ファンドや投資家は資金が回収できず、赤字になります。
企業買収をした日本電産も財政的に苦しくなるでしょう。
要は金儲けのためにEV化が必要なのです。
環境団体の利害は、EV化を訴えることが
自分たちの仕事になります。
彼らの仕事には資金が必要ですが、
様々な思惑を持つ国や企業、団体から支援を受けるでしょう。
環境団体は宗教のように盲目的にガソリン車を断罪し続ければよいのです。
それでご飯が食べられ、活動内容について称賛を受け名誉が得られるのです。
これはマスコミも同様で、これを報道することで仕事したと認められ、
ご飯が食べられるのです。
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