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No.2016 2016.5.26
自動ブレーキの現状 2016夏
□1.自動ブレーキとは?
クルマ前方の障害物との距離をセンサーで確認して、このままだと衝突すると判断したときに自動でブレーキを掛けて停車する機能です。
自動ブレーキには大きく分けて2種類あります。1つは衝突せずに止まれる機能で、衝突回避と呼びます。もう1つは、衝突はするけれど速度を可能な限り弱めて衝撃を弱くする機能で、衝突軽減と呼びます。 前方のクルマや歩行者と軽くコツンと当たったのみでも交通事故ですので、多くのドライバーは自動ブレーキと言えば衝突回避を想定して求めていると思います。よって今回は、衝突回避について取り上げてみます。
□2.自動ブレーキのセンサー
前方を認識するセンサーとして以下のものがあります。
@ミリ波レーダー
Aレーザーレーダー
B単眼カメラ
Cステレオカメラ
このうち@、A、Cは、前方にある物体との距離を測る測距センサーです。 Bは基本的に距離は測れませんが、画像処理によってメートル単位でのおおよその距離が推測できます。
@は電波ですので、太陽光等の照度条件に影響しません。 Aは基本的に赤外線を使用しているため、センサー部の受光素子は光の影響を受けます。
ステレオカメラは、2つの画像のずれ量から三角測量の要領で距離を計算するものですが、元となるデータは画像ですので様々なパターン認識に対応できます。 カメラ系の測距性能は、カメラの画素数やレンズの構造によって大きく変化します。
ミリ波レーダーやレーザーレーダーは、以下のような感じで障害物によって反射した電波や光を読み取って距離を測ります。
□3.センサーの組み合わせ
センサーは、組み合わせで使用することがあります。
a) @ミリ波レーダー + B単眼カメラ
b) @ミリ波レーダー + Aレーザーレーダー
c) Aレーザーレーダー + B単眼カメラ
ミリ波レーダーの特徴として、遠方を焦点にするような特性にすると近距離の測距精度が悪くなる場合があります。
レーザーレーダーは、遠方を焦点にするような特性にすると出力が向上し、極端な話としてレーザーメスのような威力を持つことになり、その光源を見てしまった歩行者は失明してしまいます。よってレーザーレーダーは弱い出力である必要があり、近距離しか測定できません。
b) のようにミリ波レーダーとレーザーレーダーを併用することで、遠距離から近距離まで安定して対象物との距離を測定することができます。マツダ車で設定があるようです。
単眼カメラは、画像認識である程度の空間を把握して、ミリ波レーダーやレーザーレーダーで認識できた障害物が何か?を特定するために使われていると推測できます。例えばカーブの先の路側帯に歩行者がいても、レーダーでは白線や車線を認識することができません。レーダーは測距センサーであるため、電波や光が反射したその距離の位置に何があるのか?を認識することも原理的にできません。ミリ波との組み合わせでは、近距離の状態認識をカバーしている場合もあるかもしれません。
□4.認識できないもの
現在のクルマに搭載されているシステムでは対策済みだと思いますが、
初期の自動ブレーキシステムだと以下のようなこともあるそうです。
(1)
荷物を載せていないときの低床特殊トレーラー
自動ブレーキが効くからといって調子に乗ってると、思わぬ物に乗り上げてしまう場合があるようです。荷物を載せていないときの低床のトレーラーの場合は運転席後部を検知してしまい、低床の荷台部分が検知できずに路面と誤認識して、そのまま突っ込む場合があるようです。以下のリンク先ように、特殊な構造のトレーラーがまれに走っています。
(株)トーヨートレーラー コンビネーショントレーラー
http://www.toyo-trailer.co.jp/product/index.html
http://www.toyo-trailer.co.jp/product/product02.html
(2)
歩行者
検知対象は前車の後方部のみで、歩行者や自転車はそもそも対象外であると明記されているシステムもあります。
(3)
バイクや自転車
バイクや自転車の前に止まっている車を認識して突っ込む場合があるようです。
カメラタイプは、照度条件によっても検知できないケースがあるようです。
(4)
荷台から飛び出ている荷物
一定の高さ以下に反射できる物体が無いと、その距離での障害物として認識しない場合があるようです。
(5)
センターラインを飛び出して走行する特殊トレーラーの対向車
自動ブレーキとは直接関係ないのですが、黄色いパトランプを点灯させて大きな荷物を運んでいるトレーラーが深夜の時間帯等に走行していることが時々あると思います。誘導車が先に通るので気付くはずです。 システムは基本的に対向車を検知しないため、レーンキープアシストが有効時に接触事故を起こすことがあるようです。この場合、自車線で道路法規を守って走っているのだから、はみ出して走行する相手が悪いという訳にはいきません。相手も警察署の許可を貰って走行していますので、原則は誘導員(誘導車)の指示に従って道を譲る必要があります。
ですので現状のレーンキープアシスト機能は、基本的に高速道路でしか機能しません。キャンセル機能がある場合の高速道路かどうかの判定は、車線境界線の白線の間隔(一般道:5m間隔で5mの白線、高速:12m間隔で8mの白線)やカーナビの位置情報などで判断しているようです。
(6)
寝ている人
凶悪?なひき逃げ事件の被害者は、酔っ払って道路で眠っていることが多いようです。残念ながら、寝ている人は基本的に認識できません。
鉄道の踏切で酔っ払って眠って轢かれた場合は100%轢かれた人が悪く、輸送障害によって発生した損失分が遺族に請求されます。しかしクルマの場合は、ほぼ100%轢いた人が悪く、運転者は遺族に莫大な慰謝料を払わなければなりません。最も検知して欲しい対象物の1つですが、現状では対象外です。
(7)
西日の日差し
サンバイザーを下げたくなるくらい西日の逆光が眩しいときがあると思います。そのようなときにカメラタイプやレーザーレーダーは、受信センサーがレンジオーバーしてしまって対象物を測距できない場合があります。
ミリ波レーダーは電波を使用していますので、照度条件は関係ありません。
□5.誤認識してしまうもの
条件によっては、障害物として認識させたくない場合もあります。
(1)
踏切の遮断機のバー
夜間の特殊な条件下で無理して踏切に突っ込むと、降り掛けている出口側のバーに反応して踏切内で自動ブレーキが効く場合があるようです。更に停車してしまうと、誤発進抑制機能によってアクセルを踏んでも加速できずに通過する電車と衝突することがあるようです。 世の中何があるか分からないので、もしものためにとうっかり遺書でも残しておいたら、恐らく自殺として処理されてしまうでしょう。
ちなみに踏切のバーは内側から押されても折れないように、脱出できるように設計されています。
例えばアイサイト3の説明書にはこんな一文があります。 「万一、自車が踏切内で閉じ込められた場合、ステレオカメラが遮断機を対象物と認識し、AT 誤発進抑制制御が作動することがあります。遮断機を押しのけて進む場合は、慌てずにアクセルペダルを踏み続けるか、AT 誤発進抑制制御をOFFにしてください。」
世の中には時と場合によって轢いたり衝突したほうがよいケースも多々あるため、障害物を認識させるにも色々と難しい課題だったりします。
と、このように書くと、踏切のバーは障害物として認識すべきでないと思うかもしれません。
しかし、すでに遮断機が下りているときに踏切に進入するかもしれないときは、自動ブレーキが効くべきです。踏切の手前で停止して電車が通過するのを待っているときは、誤発進抑制制御が効くべきです。
(2)
ETCゲート
一定の速度を出した状態で、特殊なタイミングでETCゲートに進入すると自動ブレーキが効く場合があるようです。しかしETCバー撤去の実証実験も行われているようですので、将来的には不要な心配になると思われます。
□6.その他の問題
以下は、現状でも起きている事故です。
(1)
機能をOFFにしている
システムの誤認識によって、頻繁にピピピとアラームが鳴って煩わしいと感じる人が多いようです。 OFFスイッチがあるのですが、システムによっては仕様としてエンジンを切っても有効なままの場合があります。 OFFにしていたことを忘れたまま翌日以降に運転し、運良く?自動ブレーキが必要な運命の瞬間がやってきたときにOFFだったということがあるようです。
未検知によって事故が起きるよりは、過検知や誤検知があっても未検知よりはまし、という考えの下で作られている場合が多いため、何もなくてもアラームが鳴ってうるさいと感じる場合があるようです。
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