No.0002 2015.2.22 1.YOKOGAWA DL1540とは YOKOGAWA DL1540 は、1990年代後半に販売されていたオシロスコープです。 サンプリングレートは200MS/sと十分で、トリガ等のオシロスコープとして一通りの機能を持っているので、 2015年でも現役で使える能力があります。 しかし発売から20年経っているため、消耗部品はほとんど劣化しています。 修理方法等については公開されていませんが、自身で試行錯誤しながら直した事例を紹介します。 2.リチウム電池のエラー 起動後の初期画面で下図のようなエラーが出たときは、内蔵されている電池が切れています。 電池が切れていると、起動する度に時間表示やオシロスコープの各設定ががリセットされてしまい、不便です。 図1 電池エラー 3.使用されている電池 電池には、東芝 ER3V というリチウム電池が使用されています。 http://www.toshiba.co.jp/battery/jp/oem/er.htm 充電ができない電池のため、いつかは電池切れを起こしてしまいます。 価格はだいたい3000円程度+送料800円程度で入手できますが、電池でその値段は高すぎます。 図2 リチウム電池 そこで秋月で互換性があると思われる電池を使います。仕様的には1/2AAサイズで、3.6VであればOKだと思います。 容量は秋月のほうが若干大きく、すぐに切れることはないと思います。 東芝と同じように、中身は塩化チオニルリチウムを使用しているようです。 基板直付けができない通常の電池形状のため、電池ホルダーも購入しました。基板に直付けできる電池ホルダもありますが、 ピンピッチの寸法的にそのままでは取付が難しく、 ピンの強度が強すぎて折り曲げ困難なため、リードタイプが良いです。 ER14250H 1/2AAサイズ形 バックアップリチウム電池 3.6V ・・・ 250円 BH-1/2AA-2A150 電池ボックス 1/2AA×1本用 プラスチック リード付 ・・・ 100円 図3 電池ホルダ 4.電池が搭載されている基板の取り外し方 充電できない消耗するだけの電池なので、乾電池やパソコンのマザーボードのボタン電池と同じように 簡単に交換できるような設計だと嬉しいのですが、実際は基板直付けです。その基板を取り外すのにも手間が掛かります。 一通り手順を読んでみて、難しそうだと思ったら断念することをオススメします。 (1) プリンタカバーの取り外し プリンタの蓋を外します。ヒンジの部分のすき間から抜くように引っ張ります。 樹脂部が劣化していて折れそうな場合は、蓋を付けたままにします。 ただしネジを2ヶ所外すための特殊なプラスドライバが必要になります。 図4 プリンタカバーの取り外し (2) 背面ネジの取り外し 背面のネジを4ヶ所外します。 図5 背面ネジの取り外し (3) 筐体カバーの取り外し 筐体カバーを外します。後ろに引っ張るようにして外します。 このとき、プリンタカバーを留める丸印の部品が、内部のフレームと干渉します。 プリンタのレバーと外装カバーも干渉するため、レバーを下図のように切り替えておきます。 各部位が干渉したときは、浮かせるようにしてスライドさせます。 図6 筐体カバーの取り外し 筐体カバーの下部は、下図のようなレール構造になっています。 取り付け時は、レールを合わせて後ろから挿入するように入れます。 上から被せるようにしても、うまく取り付けられません。 図7 筐体カバー下部のレール (4) ノブの取り外し ロータリーノブと、時間軸レンジノブを引っ張って外します。 図8 ノブの取り外し (5) ネジの取り外し 前面カバー、右サイド下の1ヶ所のネジをはずします。 図9 ネジの取り外し (6) ネジの取り外し 前面カバー、左サイド下の2ヶ所のネジをはずします。 図10 ネジの取り外し (7) 金属ブラケットの取り外し 左サイドの金属ブラケットを外します。まず右側を上に浮かせてから外します。 図11 金属ブラケットの取り外し 左下は、図のようなフック構造になっているので、知恵の輪を解くように外します。 図12 金属ブラケットのジョイント構造 (8) 前面カバーの取り外し 前面カバーを外します。まず、左側2ヶ所の爪を外します。 図13 カバー左側の爪 右側1ヶ所の爪を外します。下側の爪は、自然に外れるのでそのままにします。 図14 カバー右側の爪 右側の下は、図のようなフック構造で基板と干渉するため、カバーをずらしながら外します。 図15 カバー右下のフック構造 前面カバーを外した状態です。 図16 前面カバーを外した状態 (9) 排熱ユニットの取り外し 排熱ユニットを外します。ネジを2ヶ所外します。 排熱ファンのコネクタを外します。 図17 排熱ユニットの取り外し 下図の左側のようなフック構造がユニットの左右にあります。ユニットを上にスライドさせて切り離します。 ユニット下側は、下図の右側のようなフック構造になっているため、ユニットを斜めにした状態で引き抜きます。 図18 排熱ユニットのジョイント構造 (10) フレキの抜き取り 排熱ユニットを外すと見える上側のコネクタからフラットケーブルを抜いて、排熱ユニットを元に戻します。 仮組みのため、ネジは片側だけ締めておきます。 図19 フレキの抜き取り (11) ケーブル類の抜き取り 左側面のアース線のネジを外します。 近くの電源コネクタと、フレキシブルケーブルも外します。 図20 ケーブル類の抜き取り (12) 基板の引き抜き 2枚の基板を少し抜きます。上の基板は、金属のプレートを引き抜きます。 奥のコネクタが接続されているので、それを抜きます。 図21 基板の引き抜き 組み付け時に基板を差し込むときには、左右の横奥にあるレールに基板と金属プレートが通るようにします。 図22 基板の差し込み (13) ネジの取り外し インタフェース基板を留めている2ヶ所のネジを外します。 図23 ネジの取り外し (14) インタフェース基板の引き抜き インタフェース基板を右にスライドさせ、左隅のコネクタから外します。 図24 インタフェース基板の引き抜き (15) コネクタの抜き取り 抜いたインタフェース基板を手前に倒し、上図のコネクタ裏のあたりにスペースを作ります。 そのスペースに手を入れてコネクタを抜きます。 図25 コネクタの抜き取り (16) 樹脂ブラケットの取り外し 右側面の樹脂ブラケットを外します。最初にネジを2ヶ所外します。 左側はフック構造になっているため、持ち上げてから右にスライドさせます。 図26 樹脂ブラケットの取り外し (17) フレキの抜き取り 右側面のフレキシブルケーブルを引き抜きます。 図27 フレキの抜き取り (18) コネクタの抜き取り 右側面の後ろ側にあるコネクタを引き抜きます。 ノッチを上に引き上げてからフラットケーブルを抜きます。 両端の黒いコネクタは、下図のように基板を取り外してから抜くこともできます。 図28 コネクタの抜き取り (19) ネジの取り外し 右側面の後ろ側にあるネジを1ヶ所外します。 図29 ネジの取り外し (20) CPU基板の取り外し 右側面の基板を外します。 丸印の5ヶ所のフックに気をつけながら基板を右にスライドさせ、上側から手前に倒します。 左下には先ほど抜いたフラットケーブルとは別のケーブルが接続されているため、慎重に基板を手前に倒します。 図30 CPU基板の取り外し (21) フレキの抜き取り フラットケーブルを抑えながら、基板を抜きます。 図31 フレキの抜き取り (22) CPU基板の外観 抜いた基板は下図のようになります。図中の右上の部品が、交換する電池です。 今回の電池交換では、電池近くのコンデンサ 16V 47μF が液漏れを起こしていたため、ついでに交換しました。 電源基板などの他の基板についても液漏れを起こしているかもしれませんので、 時間と体力に余裕があれば、チェックしたほうがいいかもしれません。 なお、液漏れしている電解液の跡は、コンデンサを取り外した後に拭き取ったほうが良いです。 図32 CPU基板の外観 5.電池の交換と取り付け 元々付いている電池を取ります。 やり方は色々ありますが、はんだ吸引器でスルーホールの半田を吸い取り、 残ったはんだを小手で暖めながら電池の端子を抜いていく方法が良いと思います。 このとき力を入れて電池を抜こうとすると、スルーホールが取れてしまって修復不可能となってしまうため、 力を入れすぎないことが重要です。 電池は再利用しないため、端子部をニッパーで切り取ってから、 端子だけ小手で暖めながら抜くのも良いかと思います。 図33 電池の取り外し 電池ホルダーの背面に両面テープを貼ります。 両面テープは、自動車のダッシュボード用などの強力なものが良いです。 図34 両面テープの取り付け 電池ホルダーのリードを基板に半田付けします。 図35 リードのはんだ付け 電池ホルダーはこの位置につけました。 排熱ユニットのフックが当たらないように、スペースを空けて電池ホルダを取り付ける必要があります。 図36 電池ホルダーの取り付け リードを延長すれば、上部などに設置することもできると思います。 上部に設置すれば簡単に電池交換できると思います。 ただし両面テープのみだと、剥がれてモニタ基板等に接触して、ショート破壊(火災)を起こす可能性が否定できないため、 最低限タイラップ(インシュロック)などで結束しておく必要があると思います。 今回の場合は、リードからのノイズの重畳を懸念したため、上記の位置に取り付けました。 図37 取り付けの考察 6.組み付け バラしたときと逆の手順で組み付けていきます。 要点は下記の通りです。 (1) フレキの取り回し FDDと電池交換した基板を繋ぐフラットケーブルの取り回しに注意します。 下図のように、フックにフラットケーブルが挟まれていること確認します。 これが外れていると、ノイズが重畳します。 図38 フレキの取り回し (2) プリンタハーネスの取り回し プリンタ駆動部のケーブルを、金属フレームと透明な樹脂板の間を通るようにします。 図39 プリンタハーネスの取り回し (3) プリンタハーネスの取り回し プリンタ信号部の白い束のケーブルを、ブラウン管から遠ざけるようにし、束ねるように配置します。 カラーのケーブルも同じように遠ざけます。ブラウン管の電線と触れないようにします。 図40 プリンタハーネスの取り回し 7.最終調整 一生懸命に組み上げて、電源を入れても、相変わらず電池エラーがでると思います。 電子工作に自信がある人も、ここで挫折するのではないかと思います。 図41 電池エラー MISCボタンを押して、設定メニューを開きます。 図42 設定メニュー To NextMenu を選択します。 余談ですが最終調整後の時間合わせは、DateTime...を選択します。 図43 メニューの切換 Self Test... を選択します。 図44 セルフテストの選択 初期状態では、キャリブレーションのセルフテストが選択されていると思いますので、 他のテストを選ぶために一番左のボタンの「SelfTest CAL」を選択します。 図45 テスト種別の選択 BOARD を選択します。 図46 テスト種別の選択 EXEC を選択します。 図47 テストの実行 セルフテストが始まるので、終了するまで待ちます このとき、Batteryの項目が Faulted と表示されると思いますが、無視してかまいません。 テストが終了したら、何かのボタンを押して前の画面に戻ります。 図48 BOARDテスト 今までの手順を参考にしながら、BOARD のセルフテストをもう一度行います。 すると今度は、Batteryの項目が Pass になります。 図48 BOARDテスト これで、電源を入れたときに電池エラーが出なくなります。 各チャンネルの電圧DivisionやGND位置などの設定も、すべて保持されます。 |
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