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No.2753 2023.10.29




スズキ アルト HA25S HA25V K6Aエンジンの定番 ノッキングを修理する






□ 1.チリチリチリとノッキング

エンジンからチリチリチリと、金属が当たるようなノッキング音が出るようになりました。
エアコンを付けているときや加速時などに音が出ます。

色々と調べてみたところスズキ車ではよくあることで、K6Aエンジンは特に定番の症状のようです。
さらに色々と調べてみたところ、ノッキングなのでノックセンサーを交換する人が多いようですがまったく効果がないようです。
スパークプラグの相性説を唱える人も多く、デンソーのイリジウムプラグとの相性が悪くてノッキングが発生し、NGKのプラグとは相性が良いのでノッキングが出なくなるという主張も見受けられました。実際に両方試してみましたが言われているような違いは感じられませんでした。






更によく調べてみると、ノッキングが発生している場合、なぜか3番シリンダの圧縮が低くなっているようです。バイクの場合、キャブレター時代には「排気バルブのカーボン噛み」という症状による不具合がよくありましたが、それが原因だろうと推測して修理してみることにします。よく考えたら軽自動車は660ccとバイク並みの排気量で、加速時のエンジンはかなりの高回転になるため、バイクのような特性なのかもしれません。

「排気バルブのカーボン噛み」は、下図排気バルブの赤色部分にカーボンが堆積し、堆積したカーボンの破片がバルブの当たり面に入り込んで噛み込むことでエンジンの圧縮が弱くなり、エンジンブレーキの効きが悪くなったり、加速が悪くなってしまう症状です。









□ 2.圧縮の確認

前準備として、
エアクリーナーボックスとクランクを回すためにエンジン整備用カバーを外します。
それぞれの外し方は以下のレポートで説明しています。

No.2752 スズキ アルト HA25V エアフィルタボックス 取り外し

No.2751 スズキ アルト HA25V フロントバンパー エンジン整備用カバー 取り外し




この状態にしたら、3気筒のイグニッションコイルとスパークプラグをすべて外します。





アマゾンで売っていた格安の圧縮ゲージを使用します。





1気筒目。 クランクは、ラチェットレンチを使用して回します。





2気筒目。





3気筒目。確かに1、2気筒目より若干低いです。
それでは「排気バルブのカーボン噛み」を前提とした修理をしてみます。









□ 3.修理の前準備

排気バルブの掃除ができるよに、色々な部品を外します。

前準備として、フロントバンパーを外します。
外し方は以下のレポートで説明しています。

No.2751 スズキ アルト HA25V フロントバンパー エンジン整備用カバー 取り外し




バンパーを外した状態です。





3気筒目の掃除をするのに、上下のホースメントを補強しているアームが邪魔なので外します。





ボンネットフードのロックを外します。





外したロックはエンジンの上にでも置いておきます。





エアコンのコンデンサを留めているソケットのボルトを外します。





アーム下側のボルトを外します。





アーム上側のボルトを外します。ボルトを外すとアームが外せます。





アームを外した状態です。 それではエキマニ(エキゾーストマニホールド)を外していきます。





エキマニカバーを外します。4ヶ所のボルトですが、錆で固着しているので、予め5-56を吹いて浸透させておきます。





O2センサーの配線を留めているブラケットを外します。裏側の爪が穴に通るようにマイナスドライバー等で押します。





O2センサーのコネクタを外し、エキマニカバーを外します。





いよいよエキマニです。3ヶ所のボルトと3ヶ所のナットで留まっています。取り付ける時は、真ん中側からボルトやナットを締め付けていきます。錆びて固着している場合は、5-56を吹いて放置して浸透させます。





エキマニのマフラー側は、2ヶ所のボルトで留まっています。 その他に1ヶ所、エンジン側のステーとナットで留まっています。





すべて下から潜って外したほうが簡単です。







O2センサーの配線を留めているブラケットを外します。
写真の場合はタイラップで留めているので、タイラップを切って外します。





外したエキマニです。





カーボンが堆積しています。きちんとカーボンを取り除いてから組付けましょう。





エキマニのガスケットです。再利用する場合は、クリーナーでカーボンの汚れを取って、錆のような付着物はスクレーバーで丁寧に取り除きます。ガスケットは向きがあるので、写真のように付けます。





余計な物がすべて取り外せました。
この状態にしたら、排気ポートの掃除をします。カーボンがビッチリ堆積しています。





1気筒目





2気筒目





3気筒目。どれもカーボンで真っ黒です。









□ 4.排気バルブのカーボン噛みの修理



排気ポートをクリーナーで掃除し、カーボンを取り除きます。
下図の赤色の部分を清掃することで、排気バルブに噛み込んでいるカーボンもクリーナーで溶かしてしまうという算段です。






掃除するポートを圧縮上死点にします。 スパークプラグを付けて、クランクをラチェットで回して一番重くなる部分が圧縮上死点付近です。 それだけだと圧縮上死点が分からないため、プラグホールに長いドライバーを入れて、クランクを回してドライバーの柄が一番上に出たところに合わせ、圧縮上死点を出します。
3気筒エンジンは1→2→3→1・・・と点火するので、順番に上死点を出すようにすれば簡単です。






クリーナーは、カインズのキャブ&パーツクリーナーがおススメです。
安くて強力なのは、他にはないと思います。





@排気ポート内部を全体に吹き掛けて、液剤を浸透させるために15分くらい放置。
A再び排気ポート内部を全体に吹き掛けて、カーボンを吐き出し、液剤を浸透させるためにまた10〜15分くらい放置。
を行います。

Aは1時間くらい掛けて何度も行います。
1気筒に1缶使い切る感覚で、クリーナーをケチらないでガンガン使うのがポイントです。
動画のように、蓄積されたカーボン屑が驚くほど取れます。










クリーナーで洗い流したカーボン屑です。すごい量です。





クリーナーだけでここまで綺麗になりました。






ネットで調べると、点火プラグの穴からキャブクリーナーを入れて、燃焼室内のカーボンを取り除くと効果がある、という記事がいくつかありました。ついでですのでやってみます。イチネンケミカルズ NX エンジンチューンアップ NX5000 実売価格1200円 というクリーナーが良いようです。泡タイプです。











ホースを介して注入します。ネットの記事を見ると圧縮上死点でとありますが、圧縮上死点よりも進角させて排気バルブが開いた状態のほうが良いのではないかと思います。ホースとノズルに隙間ができると思いますが、ノズルにマスキングテープ等を巻いてからホースを挿します。

放置後に点火プラグの穴から中を覗くと湖になっているため、シリンジを使ってピストンに溜まっている液剤を抜く必要があります。





NGK LKR7ARX-Pです。今回の修理後は荒々しい加速をするようになったため、これが本来持つ性能によるパワーアップもあるかもしれません。写真は5000km走行した状態ですが、カーボンがビッチリ付いています。これもカーボンを清掃してから組付けましょう。






清掃が終わったら、エキマニ等をすべて取り付けます。
エンジンを掛けようとしても、しばらくの間は圧縮が戻らないためスターターを回し続ける必要があります。エンジンンの掛かっている車とブースターケーブルで繋ぐ、満充電のバッテリーを準備してブースターケーブルで並列に繋ぐなどしてバッテリーが上がらないようにします。

効果は絶大で、ノッキングが一切発生しなくなりました。少しアクセルを踏んだだけでも力強く加速するようになり、新車のような状態になりました。



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