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No.2707 2024.4.24
ヤンマー MRT650 ハンチングを修理する キャブレータ清掃
□ 1.エンジンが不調
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エンジンを掛けても、回転数が低いとすぐにエンストしてしまいます。
回転数を高い状態にすると、回転が安定せずにハンチングしてしまいます。
インジェクションではなくキャブレターが使用されているので、分解清掃をしてみます。
最初に燃料コックの下に付いている、燃料コシ器の清掃をします。
これは取扱説明書にも方法が記載されています。
当たり前ですが、作業前にコックは閉じておきます。
白いキャップの下側の出っ張った部分を、モンキーレンチ等で回して外します。
ヘドロのように腐ったガソリンが溜まっていました。
写真は清掃後の状態ですが、ガソリンのせいで樹脂が変色しています。
長期間動かさない場合は、キャブからガソリンを抜くのはもちろんですが、これを外してタンクからガソリンをすべて抜くことも必須です。
キャブの前に付いているエアクリーナーを外します。エアクリーナー下に付いているオイルだまりを外してからのほうが、作業性が良いかもしれません。
オイルだまりの外し方は取扱説明書に記載されています。手前のパッチン錠のレバーを外せば、オイルだまりも外れます。
エアクリーナーに刺さっている赤いホースは、引っ張れば抜けます。手前に見える10mmのナット2ヶ所を外します。
ホースとナットを外したら、引っ張ればエアクリーナーが外れます。
キャブを外す準備をします。キャブに付いている赤矢印のガソリンホースを外します。
クリップをラジオペンチ等で摘まんで下に降ろし、ホースをプライヤー等でグリグリしながら引っ張って外します。
手前に見えているチョークレバーを押さえているブラケットと、チョークレバーも外します。
スロットル自動調整のレバーとスプリングを外します。
取付時は逆の手順で外します。奥側のスプリングの中を金属棒が通るように組むのが正解ですので、
組み付ける時は別々にならないようにします。
@ 最初に手前のスプリング左側の赤矢印の個所を外す。
A 奥側のスプリング、右側の赤矢印の個所をラジオペンチやピンセット等を使用して外す。
B キャブ側の金属棒を上側に持ち上げるようにして外す。
C 金属棒右側の赤矢印の個所を外す。
D 奥側のスプリングのキャブ側を外す。
外したキャブです。チョークバルブが異常に汚れています。
ミクニ製で、353BC Z0X1 と刻印されています。
キャブの清掃にはこれらの道具が必須です。基本的にバイク用の工具で大丈夫です。
針みたいなのはジェットリーマーと呼び、メインジェット等の穴が塞がったときに広げるのに使います。
ブラシは、メインジェット等を外した穴の中を掃除するのに使います。
普通のマイナスドライバーを使うとメインジェット等が変形してしまうため、キャブ専用のマイナスドライバーを使います。すべてストレートで購入できます。
他にはエアダスターとエアコンプレッサーも必須です。
キャブクリーナーは、カインズのこれがオススメです。一番洗浄力が高く、スプレーのエアーの強さで穴の中が掃除できます。
フロート室は、12mmのボルト1本で留まっています。バイク用キャブではあまり見られない構造です。
フロートのロックピンを外します。ニッパーやラジオペンチ等で出っ張った部分を引っ掛けて、引っ張れば外れます。
ニードルバルブが固着して取れない場合があります。この場合は外すときにニードルバルブが壊れてしまうので、新品を買う必要があります。3400円くらいと非常に高価です。
横に付いている小さなメインジェットと穴の奥に入っているメインノズルを外します。キャブ専用のマイナスドライバーで外します。
メインジェットとメインノズルは、すべての穴が通るように清掃します。詰まって塞がっていると、エンジン不調の原因となります。
メインジェットは、真ん中の穴が塞がりやすいです。ガソリンが乾いて堆積して層となり、動脈硬化のように穴の径が小さくなる不具合がよくあります。
パイロッドジェットも、エンジン不調の原因になります。これは、刃先の厚めの大きなマイナスドライバーを使用して外します。キャブ用のマイナスドライバーだと刃先が薄すぎて舐めてしまいます。
ネイルドライバーは刃先が厚く、パイロッドジェットの取り外しに最適です。
パイロットジェットを外した状態です。パイロットジェットを取り付ける穴のほうが塞がっていて不調を起こす場合があるのですが、Youtube等を見ると誰も掃除したり指摘したりしていないんですよね。バイク用キャブにはない構造なので、みんな見逃しているんでしょうね。
パイロットジェット取り付け穴を拡大した状態です。外側に12か所、内側に6か所の穴が開いているのが分かると思います。この穴は、メインジェットを取り付ける穴の奥の穴へ繋がっています。
この穴が塞がるとハンチングの原因となります。合計18か所の穴を、根気強くジェットリーマーで掃除します。時々キャブクリーナーを穴の中に吹き掛けて、液が穴の中に浸透していくことを確認します。正常な状態であれば、キャブクリーナー液が溜まらずにすぐに穴の中に入っていきます。
外したパイロットジェットです。キャブがオーバーフローを起こしたりすると、このジェットの穴も塞がります。
この穴がとても細いので詰まりやすいです。
パイロットジェット取り付け穴に沢山あった穴は、赤矢印のメインジェット取り付け穴の奥の穴に続いています。
この奥にある穴が、パイロットジェットの穴と繋がっています。
キャブクリーナーを直接ストロー経由で穴の中に流し込んで、穴が通るようにします。
チョークバルブの周りにある、これらの穴の中もキャブクリーナーとブラシで清掃して綺麗にします。
時折エアコンプレッサーの圧力で穴が通るようエアダスターで吹き付けます。
チョークバルブ自体が固着気味な場合があるので、スムーズに動くようにキャブクリーナーを使います。
スロットルバルブの周りにある各穴も、同じように掃除します。
スロットルバルブ自体が固着気味な場合もあるので、軽い力で動くようになるまで同様に掃除します。
以上で、清掃は終わりです。組み付けてエンジンの不調が改善されると思いますが、それでも不調が残る場合は再度バラシて清掃です。バイクのようなキャブ調整は基本的に不要です。
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