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No.2013 2016.5.11
エンジンの掛かりが悪い原因 バッテリー編
□1.エンジンの掛かりが悪い原因
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鉛バッテリー電池の充電量が低下している
クルマは、駐車しているときも電気を使用しています。20〜50mA程度の電流を消費し続け、このときの電流を暗電流と呼びます。カーセキュリティ機能を動作させているときやリモートエンジンスターターを後付けした場合は、更に暗電流が増えます。
長期間乗らずに放置しておくと、電気の供給元であるバッテリーの充電量がどんどん減って行きます。
バッテリーは、満充電に近い状態でエンジンが掛かるように搭載されています。鉛バッテリーは1セル最大約2Vであり、スクーターも乗用車も大型RV用もすべて1セル2Vで6セル分が使われています。電圧が一定のため、大きな電力を取り出したい場合は、セルを大きくして取り出せる電流を増やす必要があります。バッテリーに余裕を持たせようとすると、大きなサイズの重いバッテリーを搭載する必要があり、価格コストも高くなってしまいます。放置しておく期間が長いと、大きなサイズであっても充電量が足らなくなりエンジンを回すことができなくなります。
鉛バッテリー電池の本来の名前は、スターターバッテリーと呼ばれてエンジンを掛けるために存在していたものです。エンジンを掛けるときにスターターモーターを回す必要があり、そのときに30〜40A程度の電流が必要になります。100A以上の電流が流れるという文言も時々見掛けますが、実際にサンプリング能力の高い電流プローブを付けたオシロスコープで測定してもそんなに流れないことが分かります。圧縮比が高く排気量が大きめでエンジンの回転抵抗が大きいRV車でも、50〜60A程度です。
ではなぜ、バッテリーが満充電でないときにエンジンの掛かりが悪くなるのかといえば、充電率が低いときは、バッテリーの内部抵抗が一時的に高くなっているためです。
例えば内部抵抗が一時的に0.1Ω、1セルあたりわずか0.017Ω高くなっているときに30Aの電気を流そうとすると、単純に3V分が電池内部で奪われてしまうことになります。セルモーターは、残りの9V×電流の消費電力でモーターを回さなくてはいけなくなり、十分なエネルギーが得られない状態になります。
対処法は、長期間クルマに乗らない場合は、バッテリーのマイナス端子を外しておくことです。テスターでバッテリー電圧を測定して12.1V以下のときには、バッテリー充電器を使用して充電をする必要があります。
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バッテリー充電液が減っている
希硫酸には水が含まれています。水分は常温でも蒸発して行きます。希硫酸自体は蒸発しないので、お寿司を食べるときに使った小皿の醤油のように、醤油の成分だけが残って干からびた状態と同じようになります。充電時には、水の電気分解によって酸素と水素が発生し、水分が無くなって行きます。ただし一般的な鉛電極にはカルシウムが配合され、カルシウムによる化学反応で水に戻るように工夫されています。
バッテリー液の液量が少ないとき、セル内部の極板との接触面積が小さくなるため、擬似的に小型サイズのバッテリーを使用しているのと同じ状態になります。このとき単位時間あたりの取り出せる電流が少なくなるため、電圧が正常でもセルモーターを回すだけの電流が得られなくなり、エンジンを力強く回すことができなくなります。
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バッテリー充電液の希硫酸が減っている
バッテリのマイナス端子に、青白い粉が付いていることがあります。これは希硫酸の結晶です。バッテリー内部から蒸発した水分に乗って一緒に外部へ放出され、バッテリー端子の鉛と化学反応を起こして結晶化したものです。このときは残っている希硫酸濃度も低下しているため、バッテリー補充液を注入したときに薄めることになり、希硫酸濃度が更に落ちてしまう場合があります。一般的にバッテリー補充液は単なる精製水で、希硫酸が含まれることはありません。この場合、充電してもすぐに放電してしまう、継続して大電流が流せる時間が短くなる等の症状が出ます。この症状が出るときには相当な年数が経っているはずですので、基本的にバッテリーを買い換えるしかありません。
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バッテリーを放電しすぎた
満充電の状態から放電を続けて、電極表面に硫酸鉛が溜まり続けると、硫酸鉛が結晶化して貼り付いてしまうことがあります。こうなると、電圧を掛けても硫酸と鉛に分解しなくなってしまいます。充電をしても希硫酸の濃度が上がらなくなり、満充電となっても短時間で放電してしまったり、継続して大電流が流せる時間が短くなるなどの症状になってしまいます。そして結晶化した硫酸塩が内部抵抗となってしまうため、大電流を流そうとするときに内部抵抗によって分圧され、端子間電圧が低くなってしまいます。
この状態を一般的にサルフェーションと呼び、1度サルフェーションを起こしてしまうと買い換えるしかありません。サルフェーションは、バッテリーの使用時間(期間)によって発生するものではありません。毎日何時間も運転しているような営業車では何年使っても発生しません。
新品に近いバッテリーを積んでいても、長期間運転せずに放電させてしまい、バッテリー電圧が例えば5V以下にまで低下しているような状態にまで1度でも放電させてしまうと、サルフェーションが発生してしまいます。
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外気温が低い
例えば真冬の氷点下-10℃のとき、バッテリー容量は25℃のときよりも3割ほど低下してしまいます。容量が少なくなってしまうということは、取り出せる電流が少なくなってしまうため、セルモーターの回りが弱くなってしまいます。また、エンジンが低温のときはフリクションロスが大きくなるため、より強い力でセルモーターを回す必要があります。
寒冷地仕様のクルマでは、バッテリーの周囲を断熱材で覆うなどして、低温時のバッテリー容量低下を防ごうとする対策が見られることもあります。
その他には、低温時のバッテリー容量低下を予め想定した上で、大きめなサイズのバッテリーを搭載することもあります。
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安いバッテリーを使用している
一定の期間クルマを動かさなかったためにサルフェーションを起こしてしまい、バッテリーを買い換える場合は注意が必要です。
ホームセンターで安売りしている物の中には、硫酸の放出やサルフェーションなどの劣化が早いものがあります。うまく作られているようで、地方における平均的な使われ方において保証で謳われている1年2万キロ程度は保つようになっているようです。例えば2年4万キロと記載されているバッテリーは、地方でクルマ通勤で乗られるような使い方をすれば少なくとも5年程度は保ちます。
しかし安いバッテリーは、2シーズン目の冬あたりでバッテリーの劣化が気になるようになります。その時期のホームセンターではタイミング良く安売りをしていて、元々安く買った物なので「もうそろそろ買い換えかな?」という心理状態になって、またその安いバッテリーを買ってしまうのです。
もちろんバッテリーは消耗品です。定期的に新しく買い換えるのは当然です。しかし、安いバッテリー2個分以下の値段で、1グレード高いバッテリーが買えてしまうのです。高いバッテリーを買ったとしても月に1度しか乗らないような使い方では、寿命は長くありません。しかし、通勤や買い物でほぼ毎日使うようであれば、いつ買い換えたのか忘れてしまうくらい長く使えるはずです。
使い方にもよりますが、何が一番お得なのか考えて買ったほうが良いと思います。
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端子が緩んでいる
ほとんどありませんが、バッテリー端子が緩んでいたり、バッテリーとセルモーターを繋いでいる線が緩んでいることがあります。
過去に修復歴アリになってしまうような大きな交通事故を起こしたり、バッテリーを交換した後などで起こることがあります。原因は締め付け時のトルク不足、外部からの強い衝撃等による内部応力による緩みだと推測されます。
エンジンや走行で受ける通常の振動等で緩むことはあり得ません。
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